またしても新エネルギー車メーカーが破産の危機!GACが救済、HYCAN失敗の真相とは
1月10日、GAC(広汽集団)は出資先である合創汽車科技有限公司(以下、HYCAN)が直面する経営困難の解決に向けた公告を正式に発表しました。近年、HYCANは大幅な販売減少、従業員の賃金未払い、アフターサービスの中断などの問題が相次ぎ、厳しい状況に直面しています。GACは社会的責任を果たすべく、従業員の権利保護とアフターサービスの引き継ぎに向けた一連の措置を講じました。
従業員賃金および経済補償金のための特別融資
公告によれば、GACはHYCANの他の株主と協議の上、株式比率に基づき従業員賃金および経済補償金を支払うための特別融資を行うことを決定しました。GACおよび子会社であるGAC AIONは、合計25%の持株比率に応じて約2380万元(実際の支出額に基づく)を提供します。この措置は、賃金未払いによる従業員の経済的負担を軽減することを目的としています。
アフターサービスの引き継ぎ
HYCANのアフターサービス問題も注目されています。GACは車両所有者の権利を守るため、子会社のGAC AIONがHYCAN製品のアフターサービス業務を引き継ぐことを決定しました。試算によれば、10年間のアフターサービスを保障するために必要な資金総額は1.74億元を超えず、株主各社が株式比率に基づいて融資を提供する形になります。この措置は、ブランドに対する消費者の信頼回復に寄与するとともに、将来の顧客権益を保護するものです。
HYCANの経緯と課題
HYCANは広州市南沙区を拠点とし、2018年4月に広汽蔚来(GACとNIOの合弁会社)として設立されました。当初、GACとNIOがそれぞれ45%を出資し、残り10%を経営陣が保有していました。GACは生産ラインを、NIOはソフトウェアの技術を提供する形で連携していました。
初期の主力車種「HYCAN 007」は、AION LXのプラットフォームを基に開発され、価格帯も同様でしたが、販売は振るいませんでした。2020年には年間1.5万台の販売計画を掲げたものの、実際には月平均100台程度にとどまりました。その後、NIOが経営難に直面したため、GACはGAC AIONの運営に注力する方針を採り、NIOは合弁事業から撤退しました。
2021年、不動産ディベロッパーの珠江投管集団が新たなパートナーとして参画し、19.23億元で株式を取得し、社名を「合創汽車(HYCAN)」に変更しました。しかし、その後も経営状況は好転せず、2023年には車両保守や修理の中断が相次ぎ、所有者の抗議行動が発生しました。さらに、同年11月には上海支社が解散し、従業員への補償金の支払いも遅延しました。
HYCANが直面した失敗の要因
HYCANの失敗は、GACとの製品の同質化に起因しています。同社の車種「Z03」「A007」「V09」はそれぞれ、GAC AION Y、AION LX、Trumpchi(トランプチ、中国語名「伝祺」)ブランドの製品に対応しており、差別化がほとんど見られませんでした。独自の開発能力はなく、すべての車両はGACの工場で生産されており、事実上「GACのサブブランド」となっていたため、消費者がGACではなくHYCANを選ぶ理由が乏しかったのです。
2023年には、GACが追加で6億元の資金投入を決定しましたが、一部の役員からは慎重な投資を求める声も上がっていました。しかし最終的に承認され、追加投資が実行されました。このような国有企業特有の意思決定プロセスが、経営判断のミスを招いた可能性があります。
新エネルギー車市場の競争激化
現在、中国の新エネルギー車市場では、テスラをはじめとする大手企業が相次いで値下げを実施しており、競争が激化しています。HYCANのような三流ブランドはもちろん、一部の二流ブランドでさえ、生き残りが難しい状況にあります。最終的には、中国の自動車業界もスマートフォン業界と同様に、少数の大手企業に集約されていくと予想されます。
HYCAN A06 plus
写真:HYCAN