中国自動車市場のジレンマ:EV普及でも充電は儲からず

ここ数年、中国の新エネルギー車市場は高い成長を維持してきました。2024年の販売台数は1,286.6万台に達し、普及率は40%を突破しました。2025年にはさらに50%を上回っています。2026年に入ってもこの傾向は続いており、最初の2か月だけで販売台数は102.3万台に達し、市場普及率は45.2%へと上昇、前年同期比で8.6ポイント向上しました。

需要の急拡大は、充電インフラの急速な整備を直接的に後押ししています。中国国家エネルギー局が1月21日に発表したところによれば、2025年12月末時点で、中国の電気自動車用充電設備の数は2,009.2万基に達しました。また、公安部の統計によると、2025年末の新エネルギー車保有台数は4,397万台に達しています。平均すると、新エネルギー車約2.2台に対して充電器1基が設置されている計算になります。

しかしながら、規模の拡大は収益の増加には結びついていません。新エネルギー車の急速な普及は、充電業界をやや逆説的な状況へと押しやっています。すなわち、車が増えるほど充電ビジネスはむしろ収益を上げにくくなり、業界全体の利益水準は急速に低下しています。

その最も直接的な表れが、サービス料金の急落です。過去1年間で、充電サービス料は約0.23元/kWhから0.17元/kWh近くまで下落し、一部の時間帯では0.1元/kWhを下回るケースも見られます。会員価格では最低0.076元/kWhにまで低下しています。サービス料は充電ステーションの主な収入源ですが、業界では少なくとも0.15元/kWh以上でなければ基本的なコストを賄えないとされています。しかし現実には、その水準を下回る方向に進んでいます。

こうした圧力は、実際の経営にも表れています。報道によれば、例えば青島のある充電ステーションは、2020年の開業当初、周辺の充電インフラ不足を背景に年間約50万元の収入を確保していました。しかし競争の激化によりサービス料が下落し続け、2023年以降は年間収入が約8万元まで落ち込み、利益は約6万元にとどまっています。また、2023年に約200万元を投じて3か所の充電ステーションを建設した事業者の場合、1ステーションあたりの年間収入は6万元にも満たず、期待を大きく下回っています。

より深く見ると、充電業界が「発展するほど儲からない」状況に陥っている主な要因は、大きく三つに整理されます。

第一に、供給過剰による稼働率の低下です。
かつて国家電網などが主導していた充電ネットワークには、現在では石油会社、インターネット企業、さらに多数の中小事業者が参入しています。拠点の過密な設置により利用者が分散し、1ステーションあたりの稼働率は低下し続けています。現在、全国の公共充電設備の平均稼働率はわずか6.2%にとどまり、業界では少なくとも8~10%が収益化の目安とされています。60%以上の充電ステーションが赤字または微益の状態にあり、わずか約10%の優良拠点が全体の55%の充電量を担っています。多くのステーションでは、1日あたりの充電量が100~150kWhにとどまり、損益分岐点とされる500kWh/日には遠く及びません。このような状況では、仮に価格が安定していても収益化は困難です。

第二に、価格競争の激化による利益の崩壊です。
稼働率が低い中で、各事業者は限られた利用者を奪い合うため、値下げを余儀なくされています。その結果、「サービス料ゼロ」や「1銭充電」といった極端な競争が頻発しています。一部のプラットフォームは補助金や会員制度を活用して集客していますが、実際にはその負担が現場の運営者に転嫁されています。価格の継続的な下落により、サービス料は「利益源」から「ほぼコスト」に近い水準へと変化し、業界全体が「競争するほど赤字になる」状態に陥っています。

第三に、コストの硬直性とビジネスモデルの単一性です。
報道によると、現在、電力コストは収入の48%以上を占めています。つまり、1元の収入のうち0.48元が電気代という直接コストであり、残りの0.52元でその他すべてのコストと利益を賄わなければなりません。現行の価格水準では、利益余地は大きく圧縮されています。さらに、送電ロスは約0.05元/kWh、用地コストは約0.08~0.12元/kWhとされ、この二つの固定費だけでサービス料にほぼ匹敵します。これに減価償却、人件費、運営維持費を加えると、多くの充電ステーションは実質的に赤字の状態にあります。

加えて、好立地の賃料は年率10%以上で上昇し、設備の年間故障率も約12%に達するなど、運営コストは上昇を続けています。一方、2023年以降、充電設備の建設および運営に対する補助金は段階的に廃止され、業界は全面的に市場化へと移行しました。その結果、コスト負担が一気に顕在化しています。同時に、90%以上の充電ステーションは依然として「電力差益+サービス料」という単一の収益モデルに依存しており、小売、蓄電、広告などの付加価値収入が乏しいため、価格下落局面における緩衝余地がほとんどありません。

さらに、自動車メーカーの参入や技術革新も、業界の圧力を一段と高めています。一部のメーカーは独自に充電ネットワークを構築し、市場価格より30%以上低い料金で顧客を囲い込んでいます。また、充電設備の高出力化により、既存資産の減価償却が加速するリスクも生じています。

こうした複数の要因が重なる中で、充電業界の収益構造は大きく変化しつつあります。従来のように、規模拡大や立地確保に依存した成長モデルは、もはや持続が難しくなっています。

一方で、需要側にも変化が見られます。個人ユーザーが主流となる中、市場の関心は「充電設備の有無」から「体験の質」へと移りつつあります。充電速度、設備の安定性、ステーション環境などが、新たな競争要因となっています。すでに一部の地域では、安全性、効率、サービス水準などに基づく星評価制度が導入され、充電ステーションの格付け管理が行われています。

長期的に見ると、充電業界は「量の拡大競争」から「効率競争」へと移行しつつあります。

新エネルギー車の急成長は、充電業界の繁栄を自動的にもたらしたわけではありません。むしろ、供給過剰、価格競争、コスト構造の硬直化が重なる中で、業界は深い調整局面に入っています。単一の収益モデルから脱却し、稼働率とサービス力を高められる事業者だけが、次の競争段階で生き残る可能性があるといえます。

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