中国、初の自動車価格ガイドライン公表――価格戦と過度な競争に歯止め

 2月12日、中国の市場監督管理総局は「自動車業界の価格コンプライアンスガイドライン」(以下、「ガイドライン」)を公表しました。近年、中国の自動車業界で頻発している価格競争の激化や虚偽の販促表示、価格カルテルなどの問題を踏まえ、価格に関する行為基準を体系的に整理・明確化したものです。自動車分野の価格行為に特化した包括的な指針が中国政府レベルで示されるのは、今回が初めてとなります。

 近年は、新エネルギー車(NEV)の急速な普及に加え、オンライン直販やライブ配信販売といった新たな販売手法の拡大により、価格設定や表示の在り方が一段と複雑化しています。規定に沿わない価格表示、実態とかけ離れた「メーカー希望価格」の提示、採算を度外視した低価格販売、価格協調といった事例も見られ、市場秩序を乱すとともに、いわゆる過度な「内巻型」競争を助長しているとの指摘があります。ガイドラインは、監督基準の統一と行為のレッドラインの明確化を通じて、企業に適法かつ適正な経営を促すことを目的としています。

 ガイドラインは全5章・28条で構成され、完成車メーカーや部品メーカー、正規ディーラー、自動車販売事業者、オンライン取引プラットフォームなどを対象とし、生産から販売、さらにプラットフォーム運営に至るまで、価格行為を包括的に規律しています。

 生産段階では、競争相手の排除を目的とした原価割れ販売を明確に禁止しています。また、値引きや補助金などを通じて実質的に損失販売となる行為や、完成車メーカーと部品メーカーとの価格協調も禁じています。需給が逼迫した局面において、コストに大きな変動がないにもかかわらず不当に価格を引き上げる行為についても、法的リスクが高いとしています。さらに、「ハードウェアを標準搭載し、機能はソフトウェアで有料解放する」ビジネスモデルについても、今回初めて明確な規定が設けられ、機能の有料条件や料金体系を事前に明示することが求められています。

 販売段階では、価格表示義務の内容がより具体化されました。表示価格以外の追加徴収を禁じるほか、実態とかけ離れた「市場価格」や「メーカー希望価格」を比較対象として掲げる表示も問題視しています。「期間限定割引」や「特典付き販売」などの販促についても、内容を正確かつ透明に示すことが求められており、低価格をうたいながら実際には在庫がないといった手法もリスクの高い行為とされています。

 直販やライブコマースといった新業態については、プラットフォーム側が出店事業者に対し、価格プロモーションへの参加を強制してはならないことを明記しています。また、価格違法の疑いがある場合には、速やかに警告や必要な措置を講じることが求められています。

 さらに、企業に対しては、価格決定プロセスや契約管理、リスク管理などの内部コンプライアンス体制の整備を促しています。重要な価格改定については、集団的な意思決定プロセスを経ることも推奨されています。

 業界内では、今回の措置について「中国の太陽光発電産業の教訓を踏まえたものだ」との見方もあります。中国の太陽光産業では過度な価格競争が進み、海外企業だけでなく国内企業も激しい消耗戦に陥り、多くが巨額の赤字を抱える結果となりました。新エネルギー車分野には政府が多額の政策支援を行ってきた経緯があり、同様の事態を回避したいとの意図があるとの分析も出ています。

 一方で、政府による過度な競争抑制策は実効性が限定的にとどまるのではないかとの慎重な見方もあります。現在の新エネルギー車産業は供給能力過剰という構造的な問題を抱えており、競争力の低い生産能力が市場から退出しない限り、価格競争の問題を根本的に解消するのは容易ではないとの指摘もあります。

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