JD(京東)、GAC・CATLと共同「国民好車」を発表──製造に関与せず「スマホ感覚で車を販売」

10月14日、中国ネットショッピング大手のJD(京東)は「11・11」(11月11日)サプライズオープンデーで、自動車メーカーのGAC(GAC)およびバッテリー大手のCATL(寧徳時代)と共同で「国民好車」を発売すると発表し、市場の注目を集めました。多くの人はこれをJDの自動車業界への本格参入と解釈しましたが、公式情報によれば、JDは直接の自動車製造には関与せず、販売とサービスを中心に自動車販売方式の革新を推進する形となっています。
三者の役割分担:JDは販売、GACは製造、CATLはバッテリー提供
JD公式および報道によれば、本プロジェクトの基本的な協力モデルは「プラットフォーム+製造+テクノロジー」です。具体的には以下の通りです。
- JD:ユーザーインサイト、オンライン販売、カスタマイズサービス、購買から利用までのフルサイクル体験を担当。JDアプリを通じ、車両の購入だけでなく、車体カスタマイズ、車用品の装着、メンテナンスサービスの選択も可能となり、購入から利用までデジタルで完結する仕組みを提供。
- GAC:車両の製造能力を提供。関係者によると、「国民好車」はGACのAion UTまたはAion Sシリーズのバッテリー交換版をベースにしたカスタムモデルになる可能性が高い。
- CATL:バッテリー技術およびバッテリー交換エコシステムを提供。チョコ型バッテリー交換システムにより、複数仕様のリン酸鉄リチウム電池や三元リチウム電池を提供し、交換ネットワークを活用して迅速なバッテリー交換を実現。
新しい販売方式:スマホのように車を販売
JDが自動車事業に関わるのは今回が初めてではありません。2021年には、EVベンチャーのENOVATE(天際汽車)と共同で「京選好車」シリーズを展開し、JDはオンライン販売とマーケティングを担当、天際汽車が製品を提供しました。今回の協力モデルも基本的に同様ですが、経験とリソースはさらに充実しています。
JDはスマートフォンの「共同製造」で豊富な経験を積んでおり、販売チャネルの優位性を活かしてサプライチェーンを逆カスタマイズし、メーカーに仕様や価格、サービスの調整を提案し、販売を加速する手法を確立しています。「国民好車」も同様に、JDのインターネットアクセスの優位を活かして、消費者がスマホを買うように車を購入できることが狙いです。
GAC側は、JDが開発に関与していないこと、合弁会社を設立する予定もないことを明言。JDは主に販売とアフターサービスを担当し、「スマホのように車を売る」と理解できます。JDは全国に約3,000のカーサービス店舗と4万以上の提携店舗を持ち、自社で改装・フィルム施工工場も運営しており、将来の「ワンストップ・フルセット」モデルを支える基盤を構築しています。
バッテリー交換車と市場上の課題
「国民好車」はバッテリー交換を採用するとされています。CATLによれば、チョコレートバッテリー交換ステーションは「ステーション探し10分、交換2分」を実現し、すでに400箇所以上のバッテリー交換ステーションが稼働中で、年末までに1,000箇所に拡大予定です。
さらに、中国公安部は11月1日より新車登録の検査免除制度を開始。これにより、JDは「オンラインで注文+オフラインで受け取り」というワンストップ自動車購入プロセスを実現できる可能性があり、ECプラットフォームによる車販売の新しい道を開くことになります。
三者協力の可能性とリスク
戦略的には、JD、GAC、CATLの協力は「1+1+1>3」の効果を生むと期待されています。JDはネットアクセスと消費者インサイトを提供、GACは車両製造に専念、CATLはバッテリー交換インフラを普及させ、リソース統合と相乗効果を生み出す構造です。
しかし課題もあります。自動車は普通の消費財とは異なり、安全性と品質は絶対的条件です。JDはデータ分析を重視するあまり技術的厳密性を損なわないよう、また効率優先で製造基準を犠牲にしないよう配慮する必要があります。さらに、多者協力において長期的な共存メカニズムを構築し、利害対立に陥らないようにすることも試練です。
マーケティングの展開と将来展望
JDはすでに事前キャンペーンを開始しており、アプリで「国民好車カスタマイズ」に参加したユーザーはJDクーポンを獲得し、購入時の割引に利用可能です。短期間で約15万人が参加するなど、JDのネットアクセスを活かした注目度獲得に成功しています。公式発表では、10月末から内覧・試乗イベントを開始し、11月9日に正式発表・JD独占販売を予定しています。
総じて、JDの自動車事業は自動車購入の「入口作り」が本質であり、目標は「車をスマホのように購入できる」ことです。今後、JDがワンストップのデジタルサービスとフルサイクル協力体制で信頼を確立できるかどうかが、「国民好車」プロジェクトの成否を左右します。
JD「国民好車」予告
画像:WeiboJD公式アカウント