乗用車市場、5月末の在庫345万台 NEV在庫が過去最多──価格競争長期化でディーラー資金繰り悪化

乗連会(乗用車市場情報連席会)幹事長の崔東樹氏が6月19日に発表した最新データによりますと、2025年5月末時点における中国全土の乗用車業界の在庫は345万台に達しており、現在の在庫量は今後の販売を54日間支えられる規模となっております。これは前月比で5万台の減少にとどまる一方で、前年同月比では16万台の増加となっており、依然として高水準の在庫が続いている状況です。
一方、CADA(中国汽車流通協会)によりますと、2025年5月のディーラー在庫係数は1.38で、前月比では2.1%減少し、前年同月比では4.2%の減少となりました。これは国際的な警戒水準とされる1.5を下回っておりますが、それが業界にとって安心材料であるとは言い切れません。
特に懸念されているのは、新エネルギー車(NEV)の在庫増加です。2024年12月時点で66万台だったNEVの在庫は、2025年5月には88万台にまで増加しており、業界全体の在庫増大を牽引する形となっております。販売台数が伸びている一方で在庫も積み上がっており、需給ギャップの拡大が懸念されております。
また、資本形態別に見ると、外資系ブランドの在庫係数は1.21(前月比11.7%減)であるのに対し、地場ブランドは1.51(前月比2.7%増)となっており、地場ブランドと外資系ブランドの間で明確な格差が広がっている状況がうかがえます。
在庫の増加がもたらす資金面での負担は、非常に深刻なものとなっています。在庫を圧縮するためには値下げがほぼ唯一の手段となっており、多くのディーラーが利益率を犠牲にしてでも現金化を進めざるを得ない状況が続いています。このため、新車販売だけでは十分な利益を見込めず、アフターサービスによる収益に頼らざるを得ないディーラーが増えています。
たとえば、大手ディーラーである中升集団では、2024年の新車販売部門で約32億元の粗利赤字を計上しており、1台あたり約7,000元の損失を抱えていたと報告されています。
さらに、2025年4月には、BYDの山東省における主要ディーラー乾城集団とその傘下にある20店舗以上の販売店が連鎖的に倒産しました。その背景には、BYDの厳格な販売方針により収益確保が難しくなり、資金繰りが行き詰まったことがあると報じられています。
CADAが発表した「中国自動車流通業界発展報告(2024—2025)」によりますと、2024年末時点における全国の自動車正規ディーラーネットワークの店舗数は32,878店となり、前年同期比で約2.7%減少しました。これにより、ネットワークの規模は縮小傾向にあります。
また、2024年に閉店または撤退した4S店の数は4,419店舗に達しており、そのうち地場ブランドが約65%、外資系ブランドが約29%、高級ブランドが約6%を占めております。今後もこの「ディーラーネットワーク規模の縮小」が続くと見られております。
総じて、表面上は在庫係数が過去とほぼ同様の「健康水準」にあるように見えますが、現在の価格競争が収束しない状況の中で、資金繰りや経営リスクは過去に比べて確実に深刻さを増していることは間違いありません。