商業施設に出店した自動車販売店、ひそかに進む撤退

近ごろ、中国の自動車市場にある変化が見えてきたと、一部のメディアは指摘しています。それは、ショッピングモール内に出店した自動車販売店が、相次いで撤退しているという点です。
かつては「食事をして、買い物をして、そのついでにクルマを見る」という導線が、新エネルギー車時代における理想的な販売モデルとされていました。しかし現実には、このモデルの持続性そのものが、いま厳しく問われています。
数年前、「蔚小理(NIO・XPeng・Li Auto)」に代表される新興EVメーカーが急成長し、直営販売モデルが業界の主流として注目を集めました。テスラにならい、従来のディーラー網を介さず、展示・販売・納車までをメーカー主導で一体的に運営する仕組みが広がっていきました。
それに伴い、自動車販売の立地戦略も大きく様変わりしました。以前は郊外のディーラーが集まっているエリアまで足を運ばなければ実車に触れられませんでしたが、その後は自宅近くの大型ショッピングモールに行けば、新エネルギー車の店舗が並ぶ光景が当たり前になりました。
2023年時点で、中国国内の新エネルギー車向け商業施設内店舗はすでに5,000店を超え、247都市・2,200以上のショッピングモールに展開されていました。そのうち約300のモールでは、5ブランド以上が同時に出店し、明確な集積効果が生まれていました。
ショッピングモール1階の、いわゆる「ゴールデンポジション」は、化粧品やアパレルに代わり、自動車の展示スペースへと置き換わっていきました。通行客にとって、クルマを見る行為は「目的」ではなく、「ついでの行動」へと変わっていったのです。
このような変化の理屈は分かりやすいものでした。商業施設はもともと人の流れが集中する場所であり、店舗デザインさえ工夫すれば、通行人を潜在顧客に転換できる可能性があります。また、食事や買い物の合間に実車を確認でき、複数ブランドを一か所で比較できる点は、消費者にとっても利便性が高いと考えられていました。
しかし、「人が集まる=儲かる」という時代は、すでに終わりつつあります。近年の問題は、来店客数が増えても、利益が増えないことにあります。
上海の龍之夢ショッピングモールは、その象徴的な例です。2022年、同モールは地下2階に新エネルギー車街区を設け、地下鉄出口や飲食エリアに直結する好立地を武器に、開業初年度には売上高が約300億元に達しました。
ところが現在では、高合(HiPhi)や極越(Jiyue)といったブランドが撤退したほか、一部のメーカーの店舗も他業種へと転換されています。街区全体として、自動車店舗の数は明らかに減少しました。
同様の動きは、北京など他都市でも見られます。今年に入ってから、複数の商業施設で自動車ブランドの退店が続き、賃料を引き下げて引き留めを図るケースもありますが、効果は限定的です。
「結局は採算が合わないのです」と語るのは、龍之夢ショッピングモールで働くZ氏です。同氏の勤務する店舗の月額賃料は約36万元で、立地は決して一等地ではありません。商業施設全体の1日平均来場者数は20万人を超えるものの、同店の来店客は平日で10〜15組、週末でも30組程度にとどまります。条件を楽観的に見積もっても、モールに入った約2,000人のうち、1人しか店に足を運ばない計算になります。
実施、月間来店客数が約440〜540組に対し、販売台数は約20台にとどまり、成約率は5%未満です。一方、従来型の4S店舗では、成約率が20%を超えるケースも珍しくありません。
かつては、ブランド認知拡大を目的に、メーカーが補助金を出してディーラーの商業施設出店を後押ししていた時期もありました。しかし関係者によれば、今年に入ってからこうした支援は大幅に縮小、あるいは打ち切られています。
BMWの事例は分かりやすいでしょう。同社は一時期、「BMW iSpace」という都市型ショールーム構想を打ち出し、ディーラーに対して一定の支援を行っていましたが、約2年の運営を経て、持続性に乏しいと判断し、現在では事実上終了しています。社内関係者は、「商業施設の店舗では新規顧客を継続的に獲得するのが難しく、収益化はほぼ不可能に近い」と率直に認めています。
1台あたりの利益率が比較的高い高級ブランドでさえ成り立たない以上、価格競争が激しい中国の国産新エネルギー車にとっては、なおさら厳しい構造と言えます。
長年ディーラー業に携わってきたW氏は、「平均車両価格15万元、単車粗利7〜8%と仮定しても、月の売上は約20万元にしかならず、賃料すら賄えない」と指摘します。人件費や金融・保険関連コストを含めれば、赤字は避けられません。
北京のある社区型商業施設の招商担当者も、「今年撤退した自動車店舗の多くはディーラー運営で、赤字になれば撤退するしかない」と語ります。
こうした商業施設内の自動車販売店の縮小は、ディーラー業界全体の経営環境の悪化と密接に結びついています。中国汽車流通協会によると、2024年にはディーラーの84.4%が原価割れでの販売を余儀なくされ、そのうち約6割は原価を15%以上下回る価格で販売していました。年間を通じて黒字を確保できたディーラーは39.3%にとどまり、残りは赤字、もしくは損益均衡の状態にあります。
商業施設での自動車販売には、一定の効果があることは確かです。しかし、ブランドの認知が一巡し、集客効果という「追い風」が弱まると、高額な賃料と低い成約率という構造的な課題が一気に表面化します。
こうした負担はディーラーにとって看過できない水準に達しており、完成車メーカーにとっても、商業施設での展開そのものを含め、改めて戦略の見直しを迫られる局面に入りつつあります。