中国EV5社、オーストラリアで修理情報不開示──コンプライアンス危機に直面

修理独占の疑いで4,700万元の罰金か

 最近、中国の電気自動車ブランドがオーストラリア市場でアフターサービス修理情報を独占している疑いが浮上し、大きな注目を集めています。オーストラリアのメディア報道によれば、BYD、Zeekr、Xpeng、Smart(Geely傘下)、Leapmotorの5社が、規定通りに修理に必要な情報を公開していなかったとして、最大1,000万豪ドル(約4,700万元)の罰金に直面する可能性があります。

罰則の根拠:オーストラリアMVIS制度

 今回の罰則は、2022年から実施されているオーストラリアの「自動車サービス・修理情報制度」(MVIS)に基づいています。同制度では、自動車メーカーに対し、新車種を発売する初日に診断ソフト、故障コード、技術パラメータなどの修理データを公式指定のAASRAプラットフォームにアップロードし、公正な価格でサブスクリプション提供することを義務付けています。

 しかしAASRAによれば、上記の中国ブランドはオーストラリア市場参入後、必要な情報をタイムリーかつ完全に独立系修理工場へ開示せず、その結果、消費者は正規ディーラー(4S店)に依存せざるを得ず、修理費用が高騰し、独立修理業者は排除されたとされています。

ユーザーの疑問と管理当局の対応

 一部のオーストラリアのユーザーは、中国メーカーのアフターサービスについて「修理待ち時間が長い」「カスタマーサービスの対応効率が低い」と指摘し、「販売は重視するが、サービスは軽視している」と批判しました。その中で、BYDはすでにAASRAに登録済みですが、リンク先がエラーページとなっていたり、連絡先が更新されていなかったりと情報が不完全であるとされました。Zeekr、Xpeng、Smartは規定に沿った修理情報ポータルを開発中と表明しましたが、Leapmotorは回答をしていません。

 オーストラリア競争・消費者委員会(ACCC)が執行を担当し、違反1件ごとに最高1,000万豪ドルの罰金が科される可能性があります。過去にはホンダが柔軟なサブスクリプションを提供しなかったことで1万8,780豪ドルの罰金を受けましたが、今回の調査は電気自動車分野で初の大規模案件であり、処分が下れば典型的な事例となる見込みです。

アフターサービス独占の背景

 中国国内では、多くのメーカーが権益や販売チャネルを縛り、ユーザーを販売店(4S店)に固定化しています。例えば、正規ルートでタイヤ交換をしなければ無償バッテリー交換の権利を失うといった事例があります。また、修理工が独自にバッテリー管理システム(BMS)のデータを改ざんしたことで有罪判決を受け、独立修理工場が「修理できない・修理しない」状況に陥っています。

 メーカー側は、電気自動車の技術は複雑で高圧バッテリーを含むため、第三者修理は安全リスクや責任問題を招くと主張します。一方で、修理・部品市場の巨大利益も背景にあります。数千元かかるディスプレイ交換や、市場価格の5割高のタイヤなど、4S店の利益率は独立修理ルートを大きく上回ります。

海外と国内の違い

 ガソリン車時代にも部品や診断ソフトには一定の制約がありましたが、多くの修理は街の修理工場で可能でした。これに対し、電気自動車はアフターサービスのチャネルが厳格に固定され、ユーザーはほぼ販売店しか選べない状況になっています。

 中国国内では長年この問題が黙認されてきましたが、オーストラリアではユーザーが権利を守る手段が多く、規制も明確であるため、中国メーカーのやり方はすぐに問題視されました。業界関係者は、この事件について「メーカーの実態が明るみに出た」と述べ、一部メーカーが閉鎖的な体制に依存して利益を得ている構造が露呈したと指摘しています。

業界への影響と展望

 車両の知能化が進むにつれ、修理権・データ開放・消費者の選択権をめぐる矛盾はますます深刻化しています。オーストラリア自動車アフターマーケット協会(AAAA)は、修理データの非公開はアフターサービスのコストを30%押し上げる可能性があると警告しました。中国メーカーが海外市場でコンプライアンスやサービスを改善できなければ、ブランドイメージや市場拡大に深刻な影響を及ぼすでしょう。

 2024年には米国でテスラが修理独占問題でユーザーから集団訴訟を受けました。一方、中国では改正独占禁止法が施行済みですが、修理データ非公開で処罰された事例はまだありません。今回のオーストラリア調査は、結果の如何にかかわらず、中国電気自動車メーカーにとって重要な「コンプライアンスへの警鐘」となりました。

 中国メーカーがオーストラリアで巨額罰金に直面するという報道に対し、ネット上では「国内では当局がメーカーを擁護し、消費者はどうすることもできないが、海外ではそうはいかない」との声が相次ぎました。BYDがブラジルで労働者の権利保障問題を指摘された事例を引き合いに出す意見もありました。オーストラリアでの今回の行動は、中国自動車メーカーへの警告であると同時に試練でもあります。ビジネスにはビジネスの論理があり、製品にはサービスの基準があります。畏れと基準を持ってこそ、持続的な発展を語ることができます。

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