メキシコ、FTA非締結国からの輸入品に追加関税――中国車など対象に最大50%、2026年から実施へ

現地時間の2025年12月10日、メキシコ連邦議会の下院および上院は、重要な関税法案を可決しました。これにより、2026年1月1日から、メキシコと自由貿易協定(FTA/TLC)を締結していない国・地域からの輸入品に対し、最大50%の追加関税を課すことが決定されました。同法案はすでに立法手続きを終え、連邦政府による公布段階に入っており、2026年の連邦予算枠組みにも組み込まれています。
メキシコ当局の発表によると、今回の関税引き上げは1,400品目以上に及び、約17の産業分野を対象としています。税率は、従来の0〜20%から10〜50%へと引き上げられます。
主な影響対象となる分野は、自動車および自動車部品、繊維・アパレル、靴類・皮革製品、鉄鋼および鉄鋼製品、アルミ製品、プラスチック製品、家電、家具、玩具、オートバイ、紙・板紙、ガラス、化粧品や日用品などです。
国別に見ると、関税の対象はメキシコと自由貿易協定を結んでいない国々で、中国、韓国、インド、ベトナム、タイ、インドネシア、トルコ、ブラジル、ロシア、アラブ首長国連邦(UAE)、南アフリカなどが明確に含まれています。一方で、米国、カナダ、欧州連合(EU)など、すでにメキシコと自由貿易協定を締結している経済圏は、今回の関税引き上げの対象外とされています。
影響を受ける産業の中でも、自動車および自動車部品分野は、特に打撃が大きい分野と見られています。新法案により、中国からメキシコへ輸出される完成車や一部の自動車部品には、最大50%の輸入関税が課される見通しです。現在、中国車のメキシコ市場におけるシェアは、すでに20%近くに達しています。
メキシコ政府関係者や国内の自動車業界団体は、今回の加税措置を概ね支持しています。中国製自動車および関連部品の流入が本国の製造業に強い競争圧力を与えており、関税による「構造的な保護」が必要だとの認識を示しています。
クラウディア・シェインバウム大統領は公の場で、この措置は「中国だけを狙い撃ちしたものではない」と強調しました。あくまで、自由貿易協定を結んでいないすべての国を一律に対象とするものであり、国内の生産力を高め、自動車や繊維といった基幹産業を守ることが目的だと説明しています。記者会見では、「メキシコはいかなる国とも対立を望んでいません。中国を尊重しています」とも述べました。
近年、米国は「中国製品がメキシコを経由して北米市場に流入している」ことへの懸念を繰り返し公に表明しており、新エネルギー車、鉄鋼、アルミ製品、越境ECなどの分野で、メキシコに対する圧力を強めてきました。カナダもすでに米国に追随し、中国製電気自動車や鉄鋼、アルミ製品に追加関税を課しています。
メキシコ政府は、今回の法案が米国の政策に直接対応したものではないと否定していますが、その関税政策の方向性は、「迂回輸出の防止」や「北米サプライチェーンの再構築」を掲げる米国の立場と高度に一致しています。複数の専門家は、2026年に予定されている米国・メキシコ・カナダ協定(USMCA)の定期見直しを前に、メキシコがワシントンに協調姿勢を示したものと受け止めています。