ネット配車に再参入、テンセントはなにを狙っているか
アリババの大挙した攻撃に続き、テンセントもネット配車市場での布石を強化している。
広州汽車とテンセントなどの提携企業が共同で構築したオンライン配車プラットフォーム「如祺出行」が26日に発表された。「如祺出行」は、広東・香港・マカオ大湾区(GBA、Guangdong-Hong Kong-Macao Greater Bay Area)を中心として、広州市からスタートし、1年以内に5つの都市で展開し、今後徐々に全国の市場をカバーする計画である。
実際、テンセントが似たような場に登場するのは今回が初めてではない。3月22日、業界内で「DiDi包囲網」とみなされているオンライン配車プラットフォーム「T3出行」が正式に発表され、一汽、東風、長安などの伝統的な自動車メーカーのほか、テンセントの姿も見られた。公開資料によると、同プラットフォームの最初の投資額は97億6000万元で、テンセントとアリババは前記3社と合計22億5000万元を出資し、全体の17.42%を占めた。
注目すべきは、テンセントが今回の広汽との提携で、同社は第2位株主の地位(株式の25%を占める)を獲得していることと、単なる出資ではなく、基礎地図から取引までのシステム開発の全方位的なサポートを提供することだ。
このほか、今年1月以降、テンセントが相次いで「テンセントモビリティ」、「テンセント乗車カード」、「テンセント乗車コード」、「テンセントタクシー」など複数の商標を登録したことも、テンセントがDiDi抜きで、直接に配車サービスに手をかけ始めるのではないかとの憶測を呼んでいる。
実際、外部から見ると、DiDiとテンセントの関係はかつてのように緊密ではなくなっており、両者の関係は微妙になってきている。例えば、DiDiは、決済、中古車、シェア自転車、出前など多くの分野で布石を打っており、自身のビジネス「クローズドループ」の構築に努め、テンセントへの依存からの脱却を図っている。
DiDiに近いものはメディアに対して、DiDiは自身の発展方向戦略を選択する際、投資家の誰にも影響されず、DiDiの目標は、モビリティを再定義し、BATと肩を並べる存在になることだと語っている。このような状況下で、テンセントが自らネット配車ビジネスに片足を突っ込むのは当然のように見える。
しかし、DiDiの重要な株主の1人として、テンセントはDiDiの多くの投資合併買収事件においてサポートしてきた。同様に、DiDiもWeChat Payの普及においても重要な助っ人となっている。そのため、テンセントはオンライン配車市場で比較的自制を維持しており、今回のスマート交通プラットフォームの構築に参加したからと言って、DiDiの「滴滴出行」と全面対決をしようとするわけではない。
テンセントは、モビリティにおいてアシスタントの役割を果たすと強調してきた。オンライン配車はモビリティ分野全体の一部に過ぎず、テンセントの位置づけとサービスのロジックに従えば、業界の競争と殺し合いに直接陥ることを避けると同時に、関連分野をカバーすることができる。アシスタントの役割を通じて、モバイル決済などのテンセントのエコシステムをさらに普及させることができる。
別の角度から言えば、過去数年で数百億元をつぎ込んで過酷な競争の中で抜きんでたDiDiは、すでに9割の市場シェアを占める業界大手になっている。テンセントであれ、その他のインターネット大手であれ、新規ブランドの立ち上げによってDiDiの地位を揺るがすことは明らかに賢明ではなく、今のところ、新たな争奪戦を引き起こそうとするライバルはいないだろう。
DiDiだけでなく神州、曹操、ティック·トックなどのプラットフォーまーは、すでにユーザーの育成と蓄積を完了している。これは、新たなオンライン配車プラットフォーマーにユーザーの移転を誘導するには、より多くの資源とコストを費やす必要があることを意味している。これは明らかにテンセントが利益を重視し、利益を追求する経営コンセプトには当てはまらない。
テンセントの対外的な発信と第三者の分析から見ると、テンセントは直接にネット配車サービスでの競争に参加するつもりはなく、インダストリアル・インターネット(産業のインターネット化)に力を入れて、より高次元の発展モデルを模索しているに違いない。