長安汽車、ブラジルに本格参入 Avatr初公開で高級×ハイテクの差別化戦略を鮮明に

11月27日、中国国有自動車メーカーの長安汽車(Chang’an)はサンパウロ・モーターショー期間中にブランド発表会を開催し、ブラジル市場への正式参入を宣言しました。この動きは、長安が南米市場へ本格的に復帰し、より体系的かつ高付加価値な形で事業を展開することを意味しています。今回のモーターショーでは、長安が現地大手自動車グループである CAOA と協力協定を締結したことも明らかになりました。さらに、長安傘下の高級スマート電動ブランド Avatr も同時に初公開され、デザイン、電動化、デジタル技術などにおける同ブランドの先進性を示すフラッグシップモデルが展示されました。CAOA はまた、ブラジルの人気スーパーモデルであるジゼル・ブンチェン(Gisele Bündchen)を「CAOA Changan」のブランドアンバサダーに起用し、ブランド認知度の向上を図っています。
ブラジル市場進出の重要施策として、長安は2年前から CAOA と共同で開発プロジェクトを進めています。双方のエンジニア300名以上が参加し、試験車両は100台を超え、累計走行試験距離は100万キロ以上に達しています。試験内容は、テストコースでの検証や公道試験など多岐にわたり、ブラジル特有の道路環境やユーザーの使用シーンに対応した車両開発が進められています。現在、両社は製品の販売、製造、アフターサービス体制を共同で構築する方針であり、研究開発から生産、販売、サービスに至る包括的なローカルバリューチェーンの確立を目指しています。
今回のブラジル再参入は、長安が同国市場を離れてから十数年ぶりの再上陸となります。前回とは異なり、長安はより高級志向で技術性を強調した商品戦略を採用し、UNI-T クロスオーバーSUV や CS75 などのモデルを先行投入することで、ブランドイメージと市場認知の確立を図っています。
近年、中国自動車メーカーは南米市場への進出を加速させています。関税が高く、コスト構造が重いブラジルの自動車市場環境において、長安はまず輸入車でブランド認知を高め、その後段階的に現地生産およびサプライチェーン構築へ進むというアプローチを取っています。これは、部品の多くを輸入に依存しコストが高止まりしているブラジルの産業構造に即した戦略であり、量産効果を得るには現地生産とローカル調達が不可欠となります。
また、ブラジル市場では SUV の需要が旺盛で、中間層のユーザーは車内空間、安全性、耐久性を重視する傾向が強いことも特徴です。それが得意分野ではない中国ブランドにとって、斬新なデザインや室内のデジタル化で差別化を図ることは競争力を高める手段の一つとなっています。長安も先進的かつハイテクイメージの強い SUV を投入することで、ブランド浸透を狙っています。
長安によれば、ブラジル市場は同社のグローバル戦略「Vast Ocean Plan」における重要拠点であり、今後の計画として以下の取り組みを掲げています。
- 現地生産体制の構築:ブラジルに工場を設立し、関税・物流コストを削減するとともに、サプライチェーンの応答速度を向上させる。
- ローカル調達比率の段階的拡大:輸入部品依存による高コスト構造を緩和し、地域産業エコシステムの形成を促進する。
- 現地開発能力の強化:現在進めている共同開発体制を継続し、ブラジル市場向けに最適化や仕様調整を行う。
- グローバルモデルの追加導入:Avatr をはじめとする次世代スマート電動モデルを先行展開し、電動化ラインナップを拡大する。
近年、南米においては中国ブランド間の競争が激化しています。同じモーターショー期間中には、ルノーと Geely(吉利)の合弁会社がブラジル工場の生産能力を18万台から38万台へ増強する計画を発表しました。さらに、Geely だけでなく、BYD、GWM(長城)など複数の中国メーカーがブラジルを主要な海外拠点として位置付けており、中国ブランドが同市場で展開する競争環境は急速に変化しています。東南アジアや南米へと進出範囲を広げる中国メーカーの動きを踏まえると、中国国内市場で見られるような激しい価格競争がブラジルでも時間の問題で起こる可能性があります。