テスラ元幹部:中国製EVを分解し「部品共用の手法を学んだ」と証言

米メディア Business Insider が 11 月 27 日に報じたところによると、テスラを含む複数のグローバル自動車メーカーは、中国のEVメーカーから積極的に学んでいるという。その中で、テスラの元グローバルセールス・マーケティング担当社長で、現在はゼネラル・モーターズ(GM)の取締役を務めるジョン・マクニール氏(Jon McNeill)が、テスラは過去に複数の中国製EVを分解し、特に「部品の高度な共用化」という重要な知見を取り入れていたと明かしました。
マクニール氏は 2015 年から 2018 年にかけてテスラに在籍しており、当時は Model 3 の量産が難航し「生産地獄」と形容されていた時期にあたります。また、Model Y の最初のティザー画像が公開された頃でもありました。同氏によれば、当時のテスラは「学習するスポンジのように」、競合車を詳細に分解して研究していたと述べています。どの中国メーカーの車両を分解したかは明言しませんでしたが、そこで得られた知見はすでに複数のテスラ車に反映されているといいます。
部品共用化はテスラが中国メーカーから得た重要な学び
マクニール氏が特に強調したのは、中国EVメーカーから学んだ最大のポイントが「異なる車種間での部品共用を徹底すること」だったという点です。ユーザーの目に触れない内部部品を可能な限り共通化することで、大幅なコスト削減につながると指摘しています。
この考え方は、後に Model 3 と Model Y の高い共通化率として具現化されました。テスラ CEO のイーロン・マスク氏も 2019 年の決算説明会で「Model Y の部品の約 75% は Model 3 と共用している」と述べており、この共用化が Model Y の生産立ち上げを大きく加速させたと説明しています。
中国メーカーの共用化はより深いレベルに:プラットフォームを超えた「二次部品」まで
部品の共通化はトヨタをはじめとする伝統的な自動車メーカーでも一般的ですが、マクニール氏は「中国メーカーの共用範囲は従来のプラットフォーム共有を大きく超えている」と指摘しています。
BYDの例では、バッテリーパック、ヒートポンプ、ワイパーモーター、シート用モーター、ハーネス配線のレイアウトなどのサブシステムにまで共用化が及んでいるといいます。
マクニール氏は「BYD の車種をすべて分解すれば、同じワイパーモーター、同じヒートポンプ、同じハーネス経路が使われていることが分かるはずです。車種ごとに別のチームがまったく新しい内部構造を設計しているわけではない」と述べ、「非常に合理的なやり方だ」と評価しました。ワイパーモーターのような部品は、車の使い勝手に大きな影響を与えるものではないため、徹底的に共用化すべきだという考え方です。
一方、トヨタのカローラとカムリのように、車種ごとにヒートポンプやワイパーモーター、シート調整機構まで異なる部品を使うケースもあり、中国メーカーとは対照的だと説明しています。
垂直統合が可能にする深い共用化:テスラ・BYD・Rivian に共通する特徴
マクニール氏は、テスラ、BYD、Rivian といった新興EVメーカーが従来より深いレベルで部品を共用できるのは、「高度な垂直統合を進め、自社で主要部品を設計・製造しているため」だと説明しています。部品設計やサプライチェーンを自社で強くコントロールできることで、コア部品の標準化、生産スピードの向上、さらに車両コストの引き下げといった効果が得られるとしています。
Rivian の CEO、RJ・スカリンジ氏(RJ Scaringe)も、シャオミ(Xiaomi)の SU7 を分解したことを明かし、高度な垂直統合を評価しつつも「コスト削減のやり方はすでに理解しており、新しい学びはなかった」とコメントしています。
新興メーカーにとって部品共用化は「生存戦略」
マクニール氏は、「過去 100 年を振り返って、ゼロから創業し、最終的に量産規模に到達した自動車メーカーはテスラのみだ」と述べ、車づくり事業が極めて高い難易度と資本負荷を伴うことを強調しています。そのため、新興メーカーが生き残るには、「徹底したコスト削減」が不可欠であり、部品共用化は最も効果的な手段のひとつだと指摘しています。
また、最近 GM と共同で実施した BYD 車の分解でも、「中国メーカーは部品共用化を極限まで突き詰めており、その体系化と実行力は目を見張るものがある」と改めて強調しました。