フォルクスワーゲン、中国市場で新エネルギー戦略を再調整――BEV一本足からREEV併行へ

中国の新エネルギー車市場における競争が一段と激化するなか、フォルクスワーゲンは、自社の新エネルギー技術戦略の見直しを進めています。
フォルクスワーゲン安徽(以下、VW安徽)において、デジタルマーケティングおよび販売を担うVW安徽デジタル販売サービス有限公司(Volkswagen (Anhui) Digital Sales and Services Co., Ltd.)のCEOを務めるシュテファン・ティマーマン氏(Stefan Timmermann)はこのほど、中国市場では新型車の投入スピードの速さや価格競争の激しさが、当初の想定を大きく上回っているとの認識を示しました。こうした市場環境の変化を受け、VW安徽では、これまで純電気自動車(BEV)を軸としてきた商品計画の見直しを進めており、その一環として、レンジエクステンダー(REEV)技術の導入についても検討しています。
同氏によると、VW安徽の設立当初はBEVモデルを戦略の中心に据えていましたが、商品戦略は市場環境の変化に応じて柔軟に調整していく必要があるとしています。現在、中国市場ではREEVモデルへの需要が明確に高まっていることから、同社としても選択肢の一つとして検討対象に加えました。ただし現時点では、BEVとREEVの2つのパワートレインについて評価を行っている段階にとどまっており、最終的な方針はまだ決定していません。
VW安徽は、フォルクスワーゲン・グループにとって中国で3社目となる完成車子会社で、「ゴールド・フォルクスワーゲン」ブランドを展開しています。現在の販売車種は、XPeng(小鵬)と共同開発したID. UNYX(与衆)06です。2026年にはこれに加え、ID. UNYX 06の改良モデルとともに、3車種の新型車を投入する計画となっています。具体的には、初の純電動スマートセダン「ID. UNYX 07」、純電動フルサイズSUV「ID. UNYX 08」、そして新たなBセグメント純電動セダンが予定されています。
近年、中国の新エネルギー車市場は急速に拡大し、普及率はすでに50%を超えています。一方で、外資系合弁ブランドは電動化の進展ペースが相対的に遅く、継続的な販売拡大を担う主力モデルをいまだ確立できていないのが実情です。その結果、内燃機関車に依存してきた事業構造の影響もあり、市場シェアは引き続き圧迫されています。
こうした競争環境を踏まえ、ティマーマン氏は、VW安徽として財務効率の向上を図りつつ、商品投入のスピードを全方位で引き上げていく方針を示しました。新型車の開発期間については、従来のおよそ4年から、現在は3年未満へと段階的に短縮されています。
もっとも、開発スピードの面では、一部の中国系メーカーと完全に同じ水準に合わせることは容易ではないとも指摘しています。その理由として、フォルクスワーゲンが一貫して安全性、品質、信頼性を最優先事項としており、シャシー、バッテリーシステム、衝突安全といった分野で、業界平均を上回る厳格な試験・検証プロセスを維持している点を挙げました。
VW安徽がREEV投入の検討を進める一方で、グループ内の別の中国合弁会社である上汽フォルクスワーゲン(上汽VW)は、すでに製品面で具体的な動きを見せています。
これまでに、上汽VWが開発するREEVモデル「ID. ERA 9X」の申請情報が、中国工業情報化部の公告に掲載されました。これは、フォルクスワーゲンブランドのREEV技術が、中国市場において量産車としての正式な申請段階に入ったことを意味します。
公告情報によれば、ID. ERA 9Xは大型SUVに位置づけられ、フォルクスワーゲン・グループとして初めて「9系」の名称体系を採用したモデルとなります。同車はレンジエクステンダー式パワートレインを搭載し、発電用エンジンにはフォルクスワーゲンのEA211エンジンプラットフォームをベースに専用開発されたユニットを採用。ミラーサイクルや可変ジオメトリーターボなどの技術が盛り込まれ、走行中にバッテリーへ電力を供給する役割を担います。
駆動方式は電動駆動を主体とし、内燃機関は直接駆動には関与しない構成となっており、技術的にもREEVの定義に沿ったものです。純電動航続距離、バッテリー容量、車体サイズはいずれも、ファミリーユースや長距離移動を想定した設計となっています。
同モデルが工業情報化部の申請プロセスに入ったことで、フォルクスワーゲンは中国市場において、BEVとREEVという2つの新エネルギー技術ルートを同時に展開する数少ない外資系メーカーの一社となりました。
VW安徽によるレンジエクステンダー技術の検討と、上汽VWによる実際のREEVモデル申請という動きを重ね合わせると、フォルクスワーゲン・グループが新エネルギー戦略の考え方を段階的に修正しつつあることが読み取れます。より柔軟な商品構成を通じて、価格競争、技術進化のスピード、そして消費者ニーズが急速に変化する中国市場への対応力を高めようとする姿勢が、徐々に明確になりつつあります。