フォルクスワーゲングループ（VW）とXpengが共同開発した初のモデル「与衆07」が、12 月 31 日にフォルクスワーゲン安徽で生産開始となる予定です。フォルクスワーゲングループ（中国）副総裁兼 CARIAD 中国 CEO の韓三楚氏は、新自動車技術の交流イベントでその進捗を明らかにし、電子電気アーキテクチャーの設計から車両統合までの全工程を 18 か月で完了したと述べました。

協業の背景と開発権限の移転

フォルクスワーゲンとXpengの協力関係は 2023 年 7 月に始まりました。フォルクスワーゲンはXpengに約 7 億ドルを出資し、4.99％の株式を取得するとともに、中国市場向けのフォルクスワーゲンブランド EV を共同開発する方針を示しました。2024 年 7 月には、電子電気アーキテクチャー（CEA）の共同開発契約を締結し、協業領域は CMP プラットフォームから MEB プラットフォームへと広がりました。

この協業により、フォルクスワーゲンが中国市場向けに独自開発した CEA を採用する初の量産モデルが誕生することになります。韓三楚氏によれば、2023～2025 年にかけて、フォルクスワーゲンは新エネルギー車の開発、電子電気アーキテクチャー、ソフトウェア開発の意思決定権を段階的に中国側へ移管しており、合肥の「フォルクスワーゲン（中国）科技有限公司（VCTC）」は 2024 年から全面稼働し、ドイツ以外で最大規模の開発拠点になっています。

CEA 第1号車としての「与衆07」

中国工業情報化部への申請情報によれば、「与衆07」は全長 4853mm、全幅 1852mm、全高 1566mm、ホイールベースは 2826mm。最大出力 170kW のモーターを搭載し、電池は国軒高科のリン酸鉄リチウムバッテリーが採用されています。

CEA は領域統合型の制御構成と「類中央集中型」のコンピューティングを特徴とし、車載コントローラーの削減とコスト最適化を図りつつ、OTA による機能更新にも対応します。今後は BEV だけでなく、レンジエクステンダーやハイブリッドなど多様なパワートレインへの展開も計画されています。

CEA のロードマップ

韓三楚氏は CEA の開発計画について、次のように説明しています。

• • CEA 1.0（現在）：電子電気アーキテクチャー分野の能力強化が目的。2026 年以降、少なくとも 4 車種に適用予定。
  • CEA 2.0（2027 年予定）：A〜D セグメントまで幅広い車種に対応し、複数のパワートレインへ拡張。
  • CEA 3.0（2029 年予定）：車両アーキテクチャーの高度化に加え、SoC チップ開発にも踏み込み、統合度をさらに高める段階。

Xpengとの協業に加えて、フォルクスワーゲンは、Horizon Robotics（地平線）との合弁会社「CARIZON」を通じて、高度運転支援向けのチップ開発も進めており、CEA との連携を想定した設計が進んでいます。

中国事業全体の方針転換

中国市場で競争環境が激しくなる中、フォルクスワーゲンは近年、事業モデルを大幅に見直しています。経営陣は「In China, for China」を掲げ、開発の中心を中国に移すことで開発期間の短縮と技術実装の迅速化を図る方針を示しています。

計画によると：

• • 2026 年以降、CEA と高機能運転支援を搭載した車種を順次投入
  • 2027 年までに 20 車種以上の電動化・知能化モデルを展開
  • 2030 年までに約 30 車種の純電動スマートモデルをラインアップ

とされており、中国事業がグループ全体の戦略転換の中心的役割を担っています。

財務状況と今後の見通し

フォルクスワーゲングループの 2025 年第 3 四半期の売上高は 803.05 億ユーロで前年比 2.3％増となりましたが、純損失は 10.72 億ユーロとなり、約 5 年ぶりの四半期赤字となりました。1～9 月期の純利益は前年同期比 61.5％減の 34 億ユーロに落ち込んでいます。

フォルクスワーゲングループ（中国）は、内燃機関車での収益確保を続けつつ、新エネルギー車では販売規模を拡大する方針を示しており、業績は 2027 年頃に改善する可能性があるとしています。

販売面では、2025 年上半期の中国市場における納車台数が回復傾向を示し、6 月は前年比 9％増となりました。

VWとXpengが共同開発した初のモデル「与衆07」

写真：工業情報化部