Zeekr、Geelyに完全統合──米国上場廃止とグループ再編の実態

7月15日、Geely(吉利)とZeekr(極氪科技)は正式に合併契約を締結し、Zeekrはニューヨーク証券取引所から上場廃止となり、Geelyの全額出資子会社となりました。これにより、両社の関係は資本・業務の両面で一本化され、Geelyは「一つのGeely」という再編戦略のもとで、事業構造の大幅な見直しに踏み切ることとなりました。

Zeekrの退場理由:外部環境と財務状況

Zeekrは2024年5月に米国で上場し、52億ドルを調達しましたが、その後の株価は20~30ドルの間で推移し、時価総額は大幅に減少しました。上場時の評価額は110億ドルに達していましたが、1年後には時価総額が57億ドルまで落ち込み、約50%の下落となりました。この背景には、米中間の証券規制強化、2025年に発動された中国株調査、加えて米国による中国製電気自動車への100%の追加関税などがあります。

財務面では、Zeekrは過去4年間で累計260億元以上の赤字を計上しています。2025年1~4月の販売実績は、通年計画の17%にとどまっていました。一方、Geelyは2025年第1四半期に56.7億元の純利益を確保しており、Zeekrの業績が単体上場会社としての継続性に課題を抱えていたことがうかがえます。

合併の内容と目的

合併前、GeelyはすでにZeekrの株式65.7%を保有しており、今回、現金と株式交換を組み合わせた方式により、100%の完全子会社化を実現しました。取引対価は1株あたり現金2.687ドルと、1株につきGeelyの新株1.23株への交換で、取引の総評価額は約172億元に達する見込みです。これは取引発表前の株価に対し、約19%のプレミアムとなっています。

合併後、ZeekrはGeelyの財務諸表に連結され、Geelyの電動化領域における売上比率が高まることで、香港市場における企業価値の再評価も期待されています。

ブランド・製品構成の再整理

Geelyは今回の合併により、乗用車事業を「Geely自動車グループ」と「Zeekrテクノロジーグループ」の2系列に再編成しました。前者にはGeely、Galaxy(銀河)、RADAR(雷達)などの中価格帯ブランドが含まれ、後者にはZeekrとLYNK & CO(領克)が統合され、高価格帯市場を担当します。

各ブランドの重複を避けるため、SEAプラットフォームを用いるZeekrは高級EVに集中し、CMAプラットフォームを採用するLYNK & COはハイブリッド車および若年層向け市場を担います。GeelyおよびGalaxyブランドは、コストパフォーマンスを重視した中価格帯市場に注力し、10万〜80万元の価格帯をカバーする構成となっています。

技術・調達面の統合効果

技術開発およびサプライチェーン管理も再編され、研究機関と調達部門が統一されました。重複投資の抑制を図りつつ、電池、半導体、原材料の集中調達によるコスト削減が進められています。実際に、ZeekrとLYNK & COの初期統合段階では、研究開発費が10~20%、サプライチェーンコストが5~8%削減されたと報告されています。

具体例として、SEAプラットフォームを共用するGalaxy L7の開発では、従来よりも30%短い開発期間と15%のコスト削減を実現し、2025年上半期には2万台以上を販売しました。

業界再編と「台州宣言」

今回の合併は、Geelyが2024年9月に発表した「台州宣言」に基づいています。同宣言は「戦略の集中」「資源の統合」「技術の共有」を柱としており、多ブランド展開によるリソースの分散を解消することを目的としています。

2024年11月にはZeekrがLYNK & COの株式51%を取得し、2025年1月にはLEVC(翼真)やRADARブランドがGalaxyに統合されました。これらの再編を通じて、2025年上半期におけるGeelyの新エネルギー車の比率は52%から73%へ上昇し、販売台数は前年同期比で73%増加しました。

グローバル戦略の転換

Zeekrの上場廃止とグループ再編は、グローバル戦略の転換も意味しています。これまで、Zeekrは米国上場において、中国企業株に対する規制リスクと低迷する評価という二重の圧力に直面していました。上場廃止後は、リソースをより柔軟に欧州や中東などの海外市場に投入できるようになります。

合併後、GeelyはZeekrの海外販売チャネルと国内の製造能力を組み合わせる計画であり、2025年までに50か国への進出を目指し、ヨーロッパに現地生産拠点を設立する方針です。

今後の課題

合併によって得られるメリットがある一方で、いくつかの課題も残されています。

まず、ブランドポジショニングの曖昧化が指摘されています。Galaxyなど中価格帯ブランドにZeekrの技術を導入することで、Zeekrの高価格戦略との整合性が問われる可能性があります。また、組織文化の違いにも留意が必要です。Zeekrは迅速な意思決定を特徴とする「インターネット企業型」の運営スタイルであるのに対し、Geelyは従来型の製造業モデルを採用しており、統合後の運営効率に影響が出る可能性があります。さらに、2025年上半期のEV平均価格は前年比で12%下落しており、今後は製品競争力とコスト効率の両立が課題になると考えられています。

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