CAAMがBYDの大幅値下げを批判 工業情報化省も過当競争の是正に乗り出す

5月31日、中国自動車産業における過熱した価格競争に対し、中国自動車工業協会(CAAM)は「公平競争秩序の維持と業界の健全な発展に関する提言」を発表し、是正に乗り出す姿勢を鮮明にしました。
CAAMは、無秩序な価格競争が業界全体の健全な発展を妨げているとして、業界関係者に対し、公平な競争秩序の維持を呼びかける提案を発表しました。新エネルギー車の販売が好調に推移する一方で、5月23日以降、一部自動車メーカーによる大幅な値下げが他社にも波及し、「価格戦争」の様相を呈しています。CAAMは、こうした過剰競争が企業の利益を圧迫し、製品品質やアフターサービスの低下を招き、消費者の権益や産業全体の安全性にも悪影響を及ぼすと警鐘を鳴らしています。提案では、法令遵守と公正な競争の徹底、コスト割れ販売や虚偽広告の禁止、大手企業による市場独占の回避、そして各社による自主点検・是正を求めており、業界全体で持続可能な発展を目指す姿勢を明確にしています。
これを受けて、工業情報化省の担当者は同時に記者会見で、CAAMが発表した提言に賛同し支持する姿勢を示しました。自動車業界における「過度な競争(いわゆる『内巻』)」の是正を強化し、産業構造の最適化と調整を推進するとともに、製品の一貫性に関する抜き取り検査を強化し、関係部門と連携して不公正競争に対する取り締まりを進め、必要な監督管理措置を講じることで、公正かつ秩序ある市場環境を断固として維持し、消費者の根本的な利益を着実に守っていくと述べました。
担当者は、「価格戦争は企業の正常な経営を大きく揺るがし、業界の健全かつ持続的な発展を脅かします」と述べ、「無秩序な値下げは製品品質やサービス水準を低下させ、消費者利益を損なうだけでなく、安全リスクにもつながります」と強調しました。「価格戦争には勝者も未来もありません」と断じました。
中国の自動車業界での価格競争は2022年後半から始まり、複数のブランドで車両価格が大幅に下落しました。2024年にはこの価格競争がさらに拡大し、対象となる車種の範囲も広がっています。中国乗用車市場情報連合会(乗聯会)のデータによると、2024年通年で値下げされた車種は227モデルに達しました。値下げ幅を見ると、新エネルギー車(NEV)の新車では平均値下げ額が1.8万元(約36万円)、値下げ率は9.2%にのぼります。一方、従来のガソリン車の新車では平均値下げ額が1.3万元(約26万円)、値下げ率は6.8%となっています。このような値下げ競争の結果、自動車メーカーの利益は減少しています。
国家統計局のデータによると、2024年の自動車製造業の総利益は前年比8%減の4623億元でした。業界平均の利益率はわずか4.3%で、工業全体の5.4%を下回っています。2025年第1四半期にはこれがさらに悪化し、3.9%にまで低下しました。
今回、CAAMが指摘した5月23日以降大幅な値下げをした自動車メーカーはBYDに他なりません。BYDは、王朝シリーズとオーシャンシリーズの計22車種を最大5.3万元値下げしたのを皮切りに、Geely(吉利)やChery(奇瑞)など複数メーカーが追随する形で新たな「値下げ合戦」が勃発しました。これは5月末に始めた大幅値下げが引き金となり、業界全体を巻き込んだ構図となっています。
こうした「以価換量(値引きで販売台数を稼ぐ)」の動きは、価格倒錯を引き起こし、企業利益を圧迫しています。中国汽車流通協会(CADA)副幹事長の郎学紅氏は、「価格競争が激化する中、メーカーと販売店は市場シェアを巡って熾烈な競争を繰り広げていますが、販売台数が増えても利益は増えない『増収増益なし』の状態に陥っています」と警鐘を鳴らしています。