中国で急増する「ゼロキロ中古車」:商務省が緊急招集、販売水増しと補助金悪用の実態

5月27日、中国商務省消費促進司が自動車メーカーや関連業界団体を招集し、「ゼロキロ中古車」および中古車流通・消費促進に関する会議を開催するとの通知が、ネット上に出回りました。会議には中国自動車工業協会(CAAM)アフターマーケット部会、中国自動車流通協会(CADA)、中国汽車技術研究中心(CATARC)などの機関が出席し、企業側からは東風汽車、BYD、元通国貿、山東華通、またインターネットプラットフォームからは抖音グループ(Tiktokの中国版)、瓜子中古車などが参加する予定です。通知によれば、会議は27日15時から開催される予定です。

また、ロイターが関係筋の情報として報じたところによると、商務省は5月27日午後、業界団体および自動車メーカーを招集し、「ゼロキロ中古車」の販売に関する協議を行ったとされています。

最近では、「ナンバー登録されたばかりのBYDシーガル2025年モデル、走行距離0.01万キロ、価格はわずか6万元 ― 新車同然の中古価格!」といった広告が中古車プラットフォーム上で頻繁に見られるようになっています。

いわゆる「ゼロキロ中古車(新古車)」とは、法的にはすでにナンバー登録または名義変更が完了し「中古車」として分類されているものの、実際には道路を走行しておらず、走行距離がほぼゼロの車両を指します。名目上は中古車であるため、新車よりも安価に販売され、市場に大きな影響を及ぼしています。

この手法の本質は、自動車メーカーが販売台数を見かけ上増加させたり、間接的に値下げを行うための手段です。メーカーは価格体系を維持しつつ、市場シェアを拡大したいというジレンマを抱えており、「ゼロキロ中古車」はその矛盾を覆い隠す最適な「隠れ蓑」となっています。表向きは定価を維持しながら、実際には「瓜子中古車」や「闲鱼」などの中古流通プラットフォームを通じて大量に販売し、見かけの好調を演出しているのです。

また、市場需要の予測ミスや過剰な生産能力の結果、在庫を抱えたメーカーやディーラーも存在します。こうした在庫車両を処理するため、一部のディーラーは新車を登録し「ゼロキロ中古車」として販売することで、在庫圧力を軽減し資金回収を図っています。

このような「中古車」は急速に市場を席巻しています。中国自動車流通協会(CADA)のデータによると、2024年の中国国内中古車市場において「登録から3か月以内、走行距離50km以下」の車両は全体の12.7%を占め、2020年と比べて7.2ポイント増加しています。

さらに驚くべきことに、ある新興EVメーカーの試作車が生産ラインからわずか48時間で「瓜子中古車」のライブ配信に登場し、新車価格の75%で販売されていました。

最近では、GWM(長城汽車)の会長・魏建軍氏がメディア取材の中で、「恒大のような自動車メーカーはすでに存在、破綻は時間の問題」と発言し、「ゼロキロ中古車」をめぐる業界の乱象を明かしました。彼によれば、一部のメーカーは販売台数を水増しするため、第三者に大量の車両を販売し、名義登録だけ行って「販売実績」として計上しているものの、実際は新車のまま中古市場に流れているとのことです。

魏建軍氏は、こうした事例は一部にとどまらず、全国に3,000〜4,000社あるディーラーの間で広く行われていると指摘し、業界の混乱の深刻さを浮き彫りにしました。

このような「ゼロキロ中古車」が大量に出現している背景には、過度な競争による市場の歪みだけでなく、国家による新エネルギー車(NEV)促進政策の抜け穴も存在しています。

「ゼロキロ中古車」が成立する前提には、グリーンナンバープレート車(NEV)に対する購入税の免除・軽減措置があります。従来のブルーナンバープレート(内燃車)では、ゼロキロ中古車として登録すれば1〜2万元の購入税が発生するため、実行は困難でした。

しかし、NEVの場合、30万元以下の車両は購入税が全額免除され、それ以上の価格の車両でも超過分にのみ課税されます。そのため、30万元以下の車種であれば、900元程度の強制保険と登録費用のみで販売実績を作ることができ、メーカーはコストをかけてでも販売実績の水増しを選択しています。

加えて、一部のメーカーはディーラーによる政策の悪用を黙認し、廃車補助金や国家・地方の補助金などを不正に取得しているとも指摘されています。

ネット上で暴露された「ゼロキロ中古車」の一連の操作手順は、以下のとおりです:

    • 自動車メーカーがディーラーに車両を出荷
    • ディーラーが補助金対象となる第三者の名義で購入手続きを行い、補助金を取得
    • 取得した補助金を第三者会社と分配

こうして強制保険を購入した「ゼロキロ中古車」が市場に出回り:

    • 一部は自動車貿易会社や中古車プラットフォームによって「在庫車」または「準新車」として販売
    • 一部は「新品同様の中古車」として海外へ輸出(すでに数百社の中古車輸出企業が資格を取得しており、その多くが未販売の新車在庫を車源としています)
    • 一部はメーカーが回収・整備し、再度販売

その結果:

    • メーカーは販売実績を得る
    • ディーラーは補助金を得る
    • 双方が「ウィンウィン」の構図となる

注目すべきは、今回召集された自動車メーカーのうち名指しされたのはBYDと東風汽車の2社のみであり、特にBYDは最近「自動車業界の恒大」と揶揄されており、現在は大規模な値下げキャンペーンを展開しているという点です。

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