風向きが変わった?工業情報化省の姿勢転換とガソリン車市場の行方

 中国の新エネルギー車の急速な発展の背景の中で、従来のガソリン車は徐々に忘れ去られつつありました。しかし、最近、中国の自動車産業の風向きが変わりつつあるようで、メディアではガソリン車の復活が議論されています。

工業情報化部の最新の発表

 11月12日、中国自動車エンジニアリング学会の年次総会で、工業情報化省(MIIT)の代表である郭守剛氏は、新エネルギー車の発展を進める一方で、内燃機関技術の発展も同時に推進することを表明しました。この発表はメディアの広範な注目を集めました。ガソリン車の技術が引き続き国家の支援を受けるのではないか、従来のガソリン車および内燃機関産業が今後も中国の自動車産業の重要な一部であり続けるのではないかと推測されています。

国内自動車市場におけるガソリン車市場の動き

 中国自動車工業協会によると、今年の最初の9ヶ月間で、国内乗用車市場におけるガソリン車の販売は依然として過半数を占めています。乗用車の総販売台数は1504.6万台で、そのうちガソリン車は800.5万台で、全体の53.2%を占めています。新エネルギー車の市場シェアは年々増加していますが、ガソリン車の需要は依然として強く、特に経済性と利便性の面での優位性があるため、消費者にとって依然として魅力的です。

 最近の統計データによると、10月のガソリン車の販売が反発し、10月の自動車全体の販売の前月比増加率は7.2%で、新エネルギー車の増加率の6.5%を上回りました。これは、ガソリン車の前月比増加率が電動車を上回ったことを示しています。

 この現象は、新エネルギー車が急速に普及する中でも、消費者が依然としてガソリン車に対して高い信頼を持っていることを示しています。特に電気自動車の火災事故などの安全問題に直面した際には、ガソリン車の安定性が注目されています。

中国政府はガソリン車の廃止を考え直す可能性

 新エネルギー車の発展が急速に進む一方で、中国政府は従来の戦略を見直し、ガソリン車の廃止を急がない方針に転換する可能性があります。その理由は次の通りです。

消費需要の多様化

 ガソリン車の市場需要は依然として強く、特に遠隔地やインフラが整っていない地域では、ガソリン車の利便性と安定性が魅力です。国内消費者の多様なニーズも、今後長期間にわたってガソリン車が存在し続けることを決定づけています。

技術的蓄積と国際競争

 中国のガソリン車技術は過去数十年で大きく進歩しており、ガソリン車を完全に放棄するのは賢明ではありません。新エネルギー車と比べて、ガソリン車の技術はより成熟して安定しており、グローバル市場で依然として競争力があります。特に海外市場では、多くの国で充電インフラがまだ整っておらず、ガソリン車が主流となっていることが挙げられます。

経済および雇用の観点

 ガソリン車の産業チェーンは広範で、エンジン、トランスミッション、製造、販売、修理など多くの分野に及んでいます。国家統計局によると、中国の自動車産業の直接従業者は543万人に達し、関連する雇用を含めると数千万人に上ります。ガソリン車を早期に廃止すると、多くの雇用が失われ、社会経済の安定に影響を与える可能性があります。

従来技術と新エネルギー技術の融合

 ハイブリッドEV(PHEV)やレンジエクステンダー付きEV(REEV)の発展は、ガソリン車技術と新エネルギー車技術が互いに排他的ではないことを示しています。PHEVは内燃機関と電動モーターを組み合わせたシステムを使用しており、REEVも内燃機関を補助動力源として使用しています。これは、ガソリン車技術の向上が新エネルギー車の発展を促進し、両技術の相互補完と融合を実現することを意味します。

海外市場での長期的な展開

 ガソリン車は中国の自動車輸出にとって新エネルギー車よりも重要です。2023年に中国は日本を超えて、世界最大の自動車輸出国となりましたが、中国が輸出した500万台の自動車のうち、400万台がガソリン車でした。

 また、欧米諸国が中国の新エネルギー車に対して貿易障壁を設けている中で、ガソリン車技術を維持し向上させることは、中国の自動車メーカーにとって海外市場での選択肢と柔軟性を提供します。特に発展途上国や充電インフラが不十分な地域では、ガソリン車の需要は依然として旺盛であり、中国の自動車メーカーが国際市場でシェアを獲得するための重要な手段です。

最後に

 中国の政策の特徴としては、ほとんどが一斉に推進され、その多くが中途半端に終わることが多いです。また、政策が曖昧で、市場は正確に政策の意図を理解することができず、振り回されています。その後、反省もなければ責任追及もないのが通例です。

 今回の工業情報化省によるガソリン車技術の支持表明が、中国政府の政策転換を示すものなのか、それとも個人の即興的な発言なのかはまだ不明です。もし前者であれば、今後関連の奨励政策が打ち出される可能性があり、同時に新エネルギー車に対する各種優遇政策が徐々に減少する可能性もあるため、注視する必要があります。

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