衝撃の調査結果:CATLの支払いサイトは259日──完成車メーカーを超える長期化、電池企業がサプライチェーン資金圧迫の「震源地」に

中国の自動車業界が深刻な「内輪競争(内巻)」(注)の渦中にあるなか、サプライチェーン全体における支払いサイト(支払期限)の長期化が、業界全体の危機を招く大きなリスクとして注目されています。この問題は、完成車メーカーと部品サプライヤーの関係に限らず、電池分野においても深刻な状況が進行中です。

経済メディア「第一財経」が6月23日に発表した「電池企業の支払いサイトが255日で完成車を上回る、トップサプライヤーの『支払い猶予の押し付け』体質の是正が急務」と題する記事では、完成車メーカーから動力電池、さらには自動車部品企業まで、業界のあらゆる層に広がる構造的・現実的な課題が詳細に分析されています。

従来、支払いサイトの長期化は完成車メーカーの責任だと見なされてきました。メーカーは一次サプライヤーとの交渉で優位に立ち、支払いを先延ばしにすることで財務負担をサプライチェーンの下層──すなわち二次・三次、そして中小企業に押しつけてきたと批判されてきました。

しかし、2024年の財務データを調査した結果、実際には動力電池メーカーといった上流のサプライヤーこそが、より深刻な「支払い猶予の押し付け」体質を抱えており、サプライチェーンの資金圧迫の「震源地」となっている実態が明らかになりました。

たとえば、主要なA株上場の完成車メーカー8社では、2024年の平均支払いサイトが182日、売掛金の回収期間(回収サイト)が66日で、差は116日。一方、上場電池メーカー8社では、支払いサイトの平均が255日、回収サイトが103日で、その差は152日に達し、完成車メーカーを大きく上回っています。なかでも業界最大手であるCATL(寧徳時代)は、支払いサイトが259日、回収サイトが65日で、差は194日にも及び、その強い立場を背景に支払いサイトを最大限に引き延ばしている構図が浮き彫りとなっています。

こうした現象は電池業界に限らず、自動車部品分野にも共通しています。第一財経が調査したA株上場の自動車部品メーカー255社では、支払いサイトの平均が142日、回収サイトが116日で、その差は26日。電池業界に比べれば相対的に小さいものの、中小企業にとっては依然として重い負担です。さらに、企業の時価総額と支払いサイトには相関があり、企業規模が大きくなるほど、支払いは遅く、回収は早いという傾向が明確になっています。これにより、規模の大きな企業が資金繰りで一層有利な立場を占め、中小サプライヤーへの圧迫は強まっています。

自動車業界のサプライチェーンは典型的なピラミッド構造を持ち、頂点に完成車メーカーが位置し、一次・二次サプライヤーが階層的に連なっています。この構造のなかで、交渉力を持つ上位企業が支払いを引き延ばし、売掛金の回収を早めることで、資金負担は徐々に下層へと押し付けられていきます。特に技術的優位性やブランド力に乏しい中小企業ほど、大きなダメージを受けています。

記事ではさらに、こうした「支払い猶予の押し付け」は、単なる商慣習ではなく、業界全体の持続的な発展を脅かす深刻な構造的問題であると指摘しています。すでに規制当局もこの問題に注目しており、6月中旬にはBYD、GAC(広汽)、SAIC(上汽)など17の主要完成車メーカーが、支払いサイトを60日以内に抑えるとの方針を公表しました。

しかし、完成車メーカーだけの自主的な取り組みでは、問題の根本的解決には至りません。記事は、サプライチェーンの中間層を構成する電池や部品のトップサプライヤーにも、業界全体の健全性を支える責任があると強調しています。

総じて第一財経は、「支払いサイト長期化」という業界の慢性的問題を、データに基づいて多角的に検証した上で、持続可能なサプライチェーン構築のためには、全体的な制度改革と協調的な是正措置が必要不可欠であるという明確なメッセージを発信しています。電動化とともに急速に進む中国自動車業界再編の時代において、「上だけが潤い、下は干からびる」という構造的不均衡を放置すれば、産業そのものの土台が崩れかねないのです。

注:中国語の「内卷」(nèijuǎn)は、日本語では「過当競争」や「過剰競争」を意味します。

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