トランプ政権、15%の世界一律関税へ転換 中国は対抗検討も難題

米国最高裁判所は現地時間2月20日、6対3の多数意見により、トランプ政権が1977年の「国際緊急経済権限法(IEEPA)」を根拠として貿易相手国に課していたいわゆる「相互関税」について、法的根拠を欠くとの判断を示しました。
判決は、同法が本来、資産凍結や金融取引制限などの制裁措置を想定したものであり、平時において大統領へ関税賦課権限を与えるものではないと指摘し、関連関税は違法と認定しました。これはトランプ政権の関税政策にとって大きな打撃となりました。
トランプ大統領は同日夜、IEEPAを根拠として実施していた関税措置の終了を確認する大統領令に署名しました。一方で、代替措置として1974年通商法122条を発動し、すべての輸入品を対象とする「世界一律関税」を導入すると発表しました。当初の税率は10%、期間は150日とされましたが、翌21日には税率を即時15%へ引き上げると表明しました。米政府は今後数か月以内に、新たな「合法的関税制度」を整備するとしています。
実務面では、米税関・国境警備局(CBP)が2月23日に通達を発出し、米東部時間24日午前0時1分以降、IEEPAに基づくすべての関税徴収を停止し、関連する関税コードも無効化すると発表しました。
こうした中、米通商代表部(USTR)のグリア代表は22日、複数の米メディアのインタビューに応じ、政府は懲罰的な相互関税を「再構築する方法」をすでに見いだしていると強調しました。ブルームバーグやニューヨーク・タイムズによると、同氏はCBSの番組で、中国、EU、日本、韓国などとの既存の通商合意は引き続き有効であり、新たに導入された15%の世界一律関税とは区別されるべきだと説明しました。
中国商務部は2月23日、今回の判決の影響を全面的に評価中であると表明するとともに、一方的な関税措置に反対する立場を改めて示しました。貿易戦争に勝者は存在しないと指摘したうえで、米国が今後別の法的手段によって新たな関税を導入する可能性を注視し、自国の権益を守るため必要な対応を検討するとしています。
つまり、米最高裁判決によってIEEPA関税の行政命令が無効となった以上、対中「相互関税」やフェンタニル関連関税は撤廃される必要がありますが、トランプ政権が別の法律を根拠として新たな関税を導入する場合、中国側も改めて対抗措置を検討せざるを得ない状況にあります。
もっとも、中国が今回新たに導入された15%関税に対抗することは容易ではないとの見方もあります。というのも、中国がこれまで受け入れてきた関税も、最高裁判決後に新たに設定された一律関税も、いずれもトランプ政権の政策判断によるものであり、各国にとっては実質的に同一の政策の延長線上に位置付けられるためです。言い換えれば、新関税は従来政策の「代替案(プランB)」に過ぎないとの見方です。
実際、グリア代表は22日の発言で、米国政府がどの法律を根拠として関税を課すかは、外国政府との通商協定とは直接関係しないと明言しています。
今後の焦点は、通商法122条が定める150日の期限後の展開です。期限は2026年7月24日頃に到来しますが、いくつかのシナリオが想定されています。
第一に、トランプ政権が十分な準備や議会調整を行えなかった場合、15%関税は自動的に失効する可能性があります。ただし、この場合は貿易政策の失敗と受け止められる可能性が高く、実現性は低いとみられています。
第二に、米議会が延長を承認し、122条に基づく関税の継続を正式に認可するシナリオです。ただし、下院では共和党内にも関税政策への不満が存在しており、民主党と連携して延長を阻止する可能性も指摘されており、政治的リスクは小さくありません。
そして最も現実的とみられているのが第三のシナリオです。すなわち、トランプ政権がこの150日間を利用し、通商法301条による制裁関税や、国家安全保障を理由とした232条関税など別の法的手段を順次発動することで、最高裁判決前と同水準の関税体系を維持する可能性です。時間的にも対応可能とみられており、政権が期間内に集中的に政策を進めるとの見方が強まっています。
このため、市場関係者の間では、150日後に15%関税そのものが消滅する可能性は高くないとの見方が大勢となっています。