経済観察報:「ゼロキロ中古車」の市場規模はすでに100万台に迫る――見過ごされてきたグレーゾーンの膨張

新車販売の伸び悩みと輸出圧力の高まりという大きな背景の中で、一種の特殊な「中古車」が、静かに流通量を拡大しています。個人ユーザーによって実際には使用されておらず、車両状態はほぼ新車同様です。しかし、登録手続きだけは一度完了しているため、「中古車」として市場に出回っている――これが、業界内で「ゼロキロ中古車」と呼ばれる存在です。
5月末、GWM(長城汽車)会長の魏建軍氏が、この「ゼロキロ中古車」による市場秩序の撹乱を名指しで批判したことで、外部からの注目が一気に高まりました。多くの自動車メーカーは依然として沈黙を守っていますが、規制当局の警戒はすでに高まっています。
最近では、経済紙「経済観察報」が中国自動車市場における「ゼロキロ中古車」の現状について、詳しく報じました。
隠された巨大市場
公式な統計は存在しないものの、「経済観察報」は複数のデータや業界関係者への取材をもとに、「ゼロキロ中古車」の市場規模がすでに100万台に達している、あるいはそれを超えている可能性があると推計しています。
CADA(中国自動車流通協会)の発表によると、2024年の中国国内におけるガソリン車の中古車取引台数は1,848.57万台でした。そのうち「ゼロキロ中古車」が占める割合は1〜3%と見られており、台数にして18.48万台〜55.45万台と推計されています。
また、新エネルギー車(NEV)の中古車市場では、2024年通年の取引台数が112.85万台となっています。技術進化の速さや在庫圧力の影響により、この市場における「ゼロキロ中古車」の割合は3〜5%とされ、台数では約3.36万台〜5.64万台に相当します。
さらに注目すべきは、輸出チャンネルです。CAAM(中国自動車工業協会)によると、2024年には中国から海外へ輸出された新エネルギー中古車が約27.2万台に達しています。そのうち9割以上が実質的に「ゼロキロ中古車」であると、輸出に詳しい複数の関係者が証言しています。つまり、登録は済んでいるものの、実際には走行されておらず、主に輸出資格の制限を回避するための手段として利用されているということです。この推計に基づけば、輸出台数のうち約24.4万台が「ゼロキロ中古車」である可能性があります。
以上を総合すると、2024年における「ゼロキロ中古車」の流通台数は、おおよそ46.34万台から85.5万台と見られています。さらに、今年に入ってからの増加傾向や輸出還付、買い替え補助金といった政策的要因を加味すれば、業界関係者の間では、2025年には年間100万台を突破するとの見方が有力です。
拡大の背景にある複合的な要因
「ゼロキロ中古車」が急速に市場を拡大している背景には、グレーな運用余地と複数の市場インセンティブが存在しています。
第一に、「在庫処分」という現実的な圧力があります。近年の生産能力拡大に伴い、一部のガソリン車では在庫が深刻に積み上がっています。「ゼロキロ中古車」は、新車価格体系を直接崩さずに、メーカーやディーラーの資金回収を早める手段となっています。
第二に、「輸出の抜け道」としての機能があります。現行制度では輸出資格を持つ企業のみが新車を海外販売できますが、一部の企業は事前に登録を済ませ、形式的に「中古車」として輸出することで、この制限を回避しています。
第三に、政策補助が拡大の触媒となっています。多くの地方政府では「旧車の廃棄・新車購入」に対して補助金を支給しており、一部の中古車業者と自動車メーカーは協力し、「買い替え」や「名義変更」を通じて、実質的には「ゼロキロ車」を販売することで補助金を得ています。このような裁定取引は明確に違法とは言えないものの、業界内で黙認されている隠れた商売となっています。
さらに複雑なのが、新エネルギー車の事情です。モデルチェンジのサイクルが早く、価格も頻繁に変動するため、旧型車種は急速に市場競争力を失い、「ゼロキロ中古車」として輸出されることが多くなっています。たとえば、Xpeng P7やZeekr 001などの旧モデルは、「ゼロキロ」輸出車の中でも比率が高いとされています。
結語
「ゼロキロ中古車」は本質的に、自動車業界が需給ミスマッチ、流通チャネルの制限、政策の空白といった環境下で生み出した「中間的な存在」です。短期的には、一部の企業にとって在庫圧縮、販売実績の確保、資金繰りの改善といった効果をもたらしますが、長期的には価格体系の混乱、流通秩序の破壊、そして消費者の利益への潜在的な影響を孕んでいます。
現時点では、「ゼロキロ中古車」はまだ規制のグレーゾーンに存在しています。規制の強化と業界の自律が交差するこのタイミングにおいて、この急成長中の隠れた市場は、中国自動車流通体系における重要な新たな変数として、今、注目を集め始めています。