「ゾンビEVメーカー」が続々復活? 政策・海外進出・資本の力で再起は可能か

ここ数年、新興EVメーカーは「業界の冬の時代」に直面してきました。Weltmeister(威馬汽車)は破産再編の渦中にあり、Human Horizons(高合汽車)は突如として生産ラインを停止しました。Zhido(知豆)Letin(雷丁)は市場から姿を消し、Aiways(愛馳汽車)は負債の泥沼に陥りました。市場にはかつてないほどの悲観論が広がり、業界関係者の間では「大規模な淘汰」が予測されていました。

しかし、2024年に入り、業界では驚くべき「復活戦」が幕を開けています。一時は沈黙し、破産寸前に追い込まれていたWeltmeister、Zhido、Letinなどが、再編や資本注入、ブランド刷新を経て、再び脚光を浴びようとしています。

破綻した新興EVメーカーが次々と再生を図る

市場環境や資本の姿勢の変化を背景に、長らく休眠状態にあった多くの新興メーカーが、次々と生産再開に向けた計画を始動させています。

Weltmeisterは2024年に破産再編を完了し、2025年には本格的な生産再開とブランド刷新を予定しています。目標は非常に野心的で、2025年に生産を再開し、2027年には年間60万台、2029年には100万台の販売を目指し、1100億元超の収益を掲げています。背後には、100億元超の投資を約束する深圳翔飛汽車銷售有限公司という強力な支援者が控えており、工場の再稼働や債務返済、短期的な運営資金を確保しています。

かつてA00クラスの小型EV市場でスター的存在だったZhidoも、Geely、電動バイク大手のAima Technology(愛瑪科技)、ベンチャーキャピタルのGSR Ventures(金沙江創投)などからの資本注入を受けて再編を完了しました。2024年3月にはブランドを刷新し、新型「知豆彩虹」を発表しています。2025年には「彩虹 長距離版」を投入し、五菱宏光MINI EVや長安Luminがひしめく小型EV市場での巻き返しを狙っています。

Letinも2024年5月に静かに生産を再開しました。今年後半には、新型マイクロEV「A50」「A51」および改良型「A52」の3モデルを発売する予定です。これらの車両にはすべて新開発のスマート化プラットフォームが採用されており、Inpower(英搏爾)などのサプライチェーン企業の支援を受けて再編が進められています。

Aiwaysの再生戦略は「背水の陣」とも言えます。2020年から2022年までの総販売台数はわずか1万台強で、2023年第1四半期の販売台数は536台にとどまり、他の新興勢に大きく水をあけられました。2024年5月には、BYDなど国内ブランドや合弁ブランドによる価格引き下げの影響を受け、Aiwaysは中国市場からの撤退を決定しました。その後、欧州本部をドイツに設立し、主戦場をドイツ市場に移す方針を打ち出しています。同年末には、米国のSPAC(特別買収目的会社)であるHudson AcquisitionがAiwaysの欧州法人との合併契約を発表しました。新会社「EUROEV」としてナスダック上場を目指すということです。Aiways幹部は「将来的には中国本土市場から完全撤退し、特に欧州市場に注力する可能性がある」と語っています。

復活を支える3つの要因

これらの企業の「再生」は偶然ではなく、以下の3つの要因が重なった結果だと考えられます。

1.市場拡大:新エネルギー車の持続的な成長

2024年、中国の新エネルギー車販売台数は初めて1,000万台を突破し、市場浸透率は40%を超えました。2025年には浸透率50%、販売台数1,650万台(輸出含む)に達するとの予測もあります。特にA00クラスの小型EV市場は回復傾向にあり、年初2カ月間の販売は21%増と、中小メーカーにとって希望の光となっています。

2.政策支援:買い替え促進策と補助金の継続

政府による支援策も、中小メーカーの追い風となっています。広東省の「買い替え促進政策」は45万台以上の新車販売と、8,000億元(約1.6兆円)以上の売上を生み出しました。2025年も新エネルギー車補助金の継続が見込まれており、中小メーカーにとっては貴重な延命措置となっています。

3.海外進出:中国自動車メーカーの海外進出が急速に進展

2023年、中国の自動車輸出台数は日本を上回り、貿易障壁が強化されつつある2024年においても、輸出量は586万台に達し、前年比19%増加しました。特に東南アジア市場では中国EVが優れた成績を収めており、タイでは2024年に中国ブランドの電気自動車がEV市場の80%のシェアを占めています。中国製EVの海外市場での好調な販売は、国内市場で苦戦していた新興自動車メーカーにとって、再起の機会となっています。

真の再生か、それとも無駄な努力か

復活の声が高まる一方で、現実は決して楽観できる状況ではありません。2025年の新エネルギー車市場は、かつてないほどの競争激化が予想されています。

Li Auto、Xpeng、NIO、シャオミといったトップグループは、すでに強固なブランド力と顧客基盤を築いており、2025年第1四半期にはLi Autoが9.3万台、XPengとシャオミはそれぞれ9万台以上を販売しています。BYD、Geely、GWM(長城汽車)といった伝統的大手も攻勢を強めており、BYDに至っては四半期だけで100万台超の販売を記録しています。

一方、「復活組」の市場基盤はまだ脆弱です。中位グループのVoyah(嵐図)、IM Motors(智己)、Avatr(阿維塔)でさえ四半期販売台数は2~3万台程度にとどまっています。復活直後のWeltmeister、Zhido、Letinにとっては、さらに厳しい道のりが待ち受けているといえるでしょう。

最大の課題は、持続的な資金調達、競争力ある新製品の継続投入、安定した販売網とアフターサービス体制の構築ができるかどうかにあります。Weltmeisterが掲げる「2027年に60万台販売」という目標に対しては、「現実離れしている」との厳しい評価も多く見られます。また、過去のブランドイメージ悪化と消費者の信頼喪失という課題も、乗り越えるには高いハードルとなります。

この「復活ブーム」の背景には、資本や政策、輸出の後押しに加えて、創業者たちの諦めない姿勢があるのは間違いありません。Weltmeister、Zhido、Letinにとって、2025年は再起のスタート地点であると同時に、厳しい現実と直面する年でもあります。ブランド信頼の回復は道半ばであり、中核的な競争力が依然として不明確な状況では、真の「再生」を遂げられる可能性は限りなく低いと言わざるを得ません。

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