Li Auto、品質問題で18名処分──沈静化狙うも、問責ラッシュに広がる「責任の所在」への疑念

10月23日、上海で走行中のLi Auto(理想汽車)MEGAが突発的に炎上し、わずか十数秒で車体が火に包まれる映像がSNSで一気に拡散しました。この事故によりLi Autoは一躍「炎上」の中心に立たされ、その後の22日間で、同社としては異例ともいえる大規模な社内処分が続くことになります。
11月14日、Li Autoは相次いで2本の内部通知を発表しました。「2024年型MEGAの冷却液漏れ」と「2025年型Lシリーズの前輪サスペンション部品の異音」という2件の品質問題について、合計18名の社員を処分し、一部は契約解除に踏み切りました。新興EVブランドを含む中国自動車メーカーにおいて、ここまで大規模で迅速な処分は極めて異例です。
とはいえ、より注目すべきは、これらの出来事が浮き彫りにした「Li Autoの品質管理体制の脆さ」、そして「ブランド信頼の揺らぎ」です。加えて、新エネルギー車において避けて通れない「安全不安」の重さを改めて突きつけるものでもありました。
10秒で車体全焼──「信頼性危機」はここから開始
10月23日の夜、上海市閔行区で走行中のMEGAの車体下部から突然火花が上がり、火は一気に車両全体へ拡大しました。乗員2名は辛くも脱出しました。事故の約4時間前には、クラウド上の監視システムが異常を検知していたものの、危険を未然に防ぐことはできなかったといいます。
Li Autoは10月31日、原因が「冷却液の防腐性能不足」にあると公表しました。同一バッチの冷却液が電池や前方モーターコントローラーの冷却プレートを腐食させ、最悪の場合は電池の熱暴走につながる可能性があったと説明しました。同社は対象となる1万1411台をリコールし、冷却液・バッテリー・コントローラーの無償交換を進めています。
この火災の対応が続く中、別の問題も表面化しました。2025年型L6/L7/L8/L9のオーナーから前輪付近の異音が相次いで報告され、サスペンションブッシュの交換が必要なケースも出てきました。最終的に、原因は「油脂の粘度変化」と説明されました。
一見無関係に見える2つのトラブルですが、どちらも「製品検証プロセスの弱点」を指し示しています。
材料、電池、そして品質──Li Autoは「問責ラッシュ」開始
今回の処分は、材料技術、電池、品質管理、シャシー開発など複数部門に及び、18名の従業員が対象となりました。一線の担当者は契約解除、管理職は評価・賞与・昇進見送りと、処分は従来に比べて極めて厳しい内容です。
社内で整理された責任の構造は以下の通りです。
- MEGA冷却液問題
・材料技術での検証不備:5名
・バッテリー関連の検証・リスク評価の不足:4名
・品質管理、安全、サービス部門での対応不適切:5名 - Lシリーズの異音問題
・油脂の検証不足:4名
表向きには「部門横断・階層別」の徹底調査に見えますが、この処分方法には業界内でも賛否が分かれています。
より大きな論点は、今回の対応は本当に「問題の根」を断とうとしたものなのか、あるいは「人を処分することで幕引き」を狙ったものなのか
という点です。
ブランドの信頼を左右するのは、18人の退職や降格そのものではなく、サプライチェーンと検証体系の再構築と極めて低頻度のリスクを事前に察知する仕組みづくり、といった本質的な改革である、という指摘は少なくありません。
「責任は本当に現場か?」──広がる疑念と不信感
処分内容が公表されると、ネット上では議論が沸騰しました。
「現場のエンジニアを処分してどうするのか。材料検証の仕組みや試験のプロセス、プロジェクトの進め方を決めているのは誰なのか。現場に決定権などないのに、これが品質管理と言えるのか」
「問題の所在が現場ではないのに、最も重い処分は現場。これではブランドとしてのマネジメント能力そのものに不安を感じる」
「品質管理とは、プロセスを見直し、仕組みを強化することであって、『スケープゴート』を探し出して終わりにすることではない」
こうした声は感情的に見えるかもしれません。しかし、そこに込められた疑問は共通しています。
──今回の問責は、対症療法にすぎないのか。それとも本当に体質改善につながるのか。
ユーザーも業界も、その点を注視しています。