Horizon Robotics、コックピットと運転支援の統合型SoCを発表 単一チップで車載計算の中央集約化を推進

4月22日、Horizon Robotics(地平線)は北京において、コックピットと運転支援の統合に向けた車両用インテリジェント・エージェント技術体系を発表しました。これには、Starry(星空)シリーズの車載チップ、車載オペレーティングシステム「KaKaClaw」、および先進運転支援システム「HSD V1.6」が含まれており、チップ、OS、アプリケーションの三層を一体化したソリューションを構成しています。本体系の中核は、従来それぞれ異なるチップおよびシステム上で動作していたスマートコックピット機能と運転支援機能を、単一のSoCおよび統一されたソフトウェアアーキテクチャに統合し、演算資源・メモリ・スケジューリングの一元化を実現する点にあります。この変化は、自動車の電子電気アーキテクチャが分散型から中央集約型(Central Compute)へと移行しつつあることを示しています。
三層構成のうち、Starryチップは統一された演算基盤を担います。従来のスマート車両では、コックピットと運転支援がそれぞれ別個のチップおよびシステムで処理され、インターフェースを介してデータ連携を行う「分散型アーキテクチャ」が一般的でした。この方式では機能面での連携は可能であるものの、計算資源は独立しており、基盤レベルでの統合は実現されていませんでした。今回のStarryチップは、この構造をチップレベルから見直したものです。5nmの車載プロセスを採用し、CPU、BPU、GPUなど複数の計算ユニットを統合することで、コックピット側と運転支援側の大規模モデルを同時に実行可能としています。具体的には、Starry 6Pは20コアCPU、最大650TOPSの演算性能、273GB/sのメモリ帯域を備え、Starry 6Hは500TOPSの構成となっています。統一メモリアーキテクチャと共通ソフトウェア基盤により、従来分離されていたドメインコントローラーは単一の計算プラットフォームへと統合され、演算資源の共有と集中管理が可能となります。
このアーキテクチャの変化により、車両内の計算資源は「分散配置」から「集中管理」へと移行します。統一された演算プールのもとで、リソースは固定的に割り当てられるのではなく、タスクに応じて動的に配分されるようになります。その結果、冗長な構成を削減できるとともに、システム間の呼び出し回数が減少し、処理効率の向上が見込まれます。さらに、ハードウェア構成の簡素化により、電子アーキテクチャ全体の最適化が進み、量産展開に向けた条件も整備されます。
安全面では、Horizon Roboticsは「Fortress(城堡)」と呼ばれる物理的隔離アーキテクチャを導入し、コックピット系と運転支援系をハードウェアレベルで分離しつつ、それぞれの独立動作を可能としています。運転支援領域はASIL-Dの最高安全水準に対応しており、コックピットシステムが再起動した場合でも運転支援機能に影響を与えない設計とされています。
また、Starryチップについては、フォルクスワーゲン、Chery、BYDなど10社以上の自動車メーカーに加え、ボッシュやデンソーといったTier1サプライヤーから、量産導入に向けた関心を集めていると報じられています。
Horizon Roboticsが構築した三層構造のうち、KaKaClawは中国初の「車両インテリジェント・エージェント型OS」と位置付けられ、リソース管理とユーザーインターフェースを担います。チップ、OS、HSDは同一プラットフォーム上で動作し、システム間通信の削減と処理効率の向上を図っています。KaKaClawは自然言語による入力に対応しており、ユーザーは音声指示によってコックピット機能と運転支援機能を並行して制御することが可能です。システムは統一アーキテクチャ上でタスクを判断し、複数システムによる同時応答や競合を回避します。
さらに同OSは、多様な人格設定や方言対応を備えるほか、長期記憶機能によってユーザーの利用習慣を学習し、個別シナリオに応じた機能を生成します。加えて、ユーザー自身がコード不要で機能を定義・拡張できる仕組みを備えており、公式およびユーザーによる機能共有も可能とされています。
セキュリティ面では、すべてのSkill機能は独立したサンドボックス(Sandbox)環境で実行され、外部システムとは物理的に分離されています。権限管理はポリシーエンジンによって制御され、未認可の操作は自動的に遮断されます。また、クラウドモデル、車両制御、第三者API間の権限逸脱を防ぐ設計となっており、プライバシールーター(Privacy Router)によって外部通信も管理されます。ユーザーデータは車両内に保持されるため、外部への漏洩リスクの低減が図られています。
実行層にあたるHSD運転支援システムは、一段式のエンドツーエンド構造を採用しており、今回発表されたV1.6では日常利用シーンを重視した機能改善が行われています。具体的には、追従走行や車線変更の自然性向上、リモート駐車や降車後駐車機能の追加、さらには自動緊急ブレーキや回避操舵など安全機能の拡充が挙げられます。対応車種における選択率は約77%であり、運転支援の利用比率も約半数に達しています。
こうした単一チップによるコックピットと運転支援の一体化は、コストと効率の両面での改善を目的としています。チップ数および周辺部品の削減によりハードウェアコストを抑制できるほか、プラットフォーム統合によってシステム開発の複雑性も低減されます。公表値によれば、車両スペースは約50%削減され、1台当たりのコストは1500〜4000元低減、開発期間は従来の18か月から約8か月へと短縮されるとされています。
総じて見ると、車両知能の統合はこれまで、機能連携からドメイン統合へと進み、現在はチップレベルでの統合段階に入っています。Horizon Roboticsの今回の発表は、この流れにおける一つの技術的実装例と位置付けられます。
同様の方向性としては、海外ではNVIDIAの「DRIVE Thor」が挙げられます。Thorもコックピット機能と自動運転機能を単一SoC上で統合することを前提とした設計であり、中央集約型の車載計算アーキテクチャを志向しています。この点で、Starryチップは技術的なコンセプトとしてはThorと同一カテゴリに属するものといえます。
ただし、今後このアーキテクチャが業界の主流となるかどうかは、今後の量産実績やコスト、信頼性といった要素に依存すると考えられます。現時点では、中央集約型計算への移行を示す一つの実践例と見ることができます。
Horizon Robotics Starry シリーズ車載チップ

画像:Horizon Robotics