テスラ神話の終焉か?中国で5月販売15%減、8カ月連続の前年割れ

乗連会(全国乗用車市場情報連席会)のデータによりますと、テスラ中国の5月の卸売販売台数は61,662台で、前年同月比15%の減少となり、8カ月連続で前年実績を下回りました。前月比では5.5%増となりましたが、価格競争が激化する中国の電気自動車市場において、テスラが受けるプレッシャーは強まっています。
現在、テスラが中国で販売している主力モデルのModel 3とModel Yは、いずれも上海ギガファクトリーで生産されています。しかし、BYDなどの地元メーカーが急速に台頭する中で、テスラの市場地位は大きな脅威にさらされています。BYDの5月の乗用車販売台数は前年同月比14.1%増の376,930台を記録しました。さらに、4月には欧州市場における新規登録台数で初めてテスラを上回り、7,231台となりました。一方、テスラは49%減の7,165台に落ち込みました。
加えて、テスラは世界の他の市場においても苦戦を強いられています。2024年第1四半期の世界生産台数は362,600台で、前年同期比13%減少しました。米国市場では、4月の販売台数が39,000台にとどまり、前年同月比で19.6%減少しました。これは、市場全体が10%成長する中での大幅な落ち込みです。
特にヨーロッパ市場での減少が顕著です。2024年1〜4月のテスラの欧州販売台数は、前年の101,000台から62,000台へと急減し、約40%の減少となりました。各国でも深刻な下落が見られ、ドイツでは1〜5月の登録台数が前年同期比57.7%減、イギリスでは5月に45.8%減、フランスでは67%減、イタリアでは20.3%減と、いずれも厳しい結果となっています。一方で例外もあり、ノルウェーでは5月の登録台数が前年同月比213%増、オーストラリアではModel Yの販売台数が122.5%増加しています。
かつてはスマートEV技術の先駆者と見なされていたテスラですが、現在では「グローバル技術リーダー」としての輝きを徐々に失いつつあります。主力モデルのModel 3とModel Yは、それぞれ8年前と6年前に発売されたものの、いまだに本格的なフルモデルチェンジは実施されておらず、小規模な改良によって商品力を維持している状況です。また、800Vの高電圧アーキテクチャにも対応しておらず、充電効率の面では新興メーカーに後れを取っています。
FSD(完全自動運転)システムも中国市場では反響が薄く、価格も高額です。オプションとして64,000元(約130万円)を追加で支払う必要があります。ファーウェイやXpengなどのブランドがソフトウェアとハードウェアの一体化によってコスト削減を実現している一方で、FSDの高価格戦略は時代の流れに合っていないように見受けられます。さらに、4680バッテリーの量産は2年遅れ、性能も期待を下回っており、テスラの技術的優位性は一段と薄れています。
中国市場において、かつて期待されていた技術的なアドバンテージは徐々に競争力を失っています。現在でも、電力消費効率や運転フィーリングといった点では一定の優位性を保っていますが、スマート化、プラットフォーム設計、バッテリー技術の分野におけるリードは侵食されつつあります。
2018年に24.5万台だった販売台数は、2023年には180.8万台にまで拡大し、テスラは新興EVメーカーから世界的リーダーへと飛躍を遂げました。しかし現在では、BYDなどの伝統的な自動車メーカーに加え、中国の新興EVメーカーをはじめとする新興勢力にも追い上げられ、テスラの成長神話は大きな転換点を迎えています。