新エネ車産業に乱入者:不動産大手の恒大グループが「爆買い」を繰り返す
(恒大自動車?聞いたことがないよと言いたいですが、ちょっと待ってください、ひょっとしてすごい新エネ車メーカーが中国で誕生するかもしません)
5月30日、中国不動産大手の恒大グループが世界トップレベルのハブモーター会社、英Protean社を買収したニュースが、自動車業界に大きな波紋を呼んだ。これは、恒大が将来的に世界有数のハブモーター技術を手に入れたことを意味する。
わずか1年の間に、会長の許家印氏は、恒大の「爆買い」を指揮してきた。数えてみると、スウェーデンのNEVS、CENAT(上海Ka耐新能源有限公司)、ケーニグセグ(Koenigsegg Automotive AB)、オランダのe-Tractionなどの自動車製造技術や資質を持っている企業を傘下に収め、先手を取って自動車販売チャンネルを持っている広彙グループに出資し、自動車業界進出の準備を整えた。
恒大のグローバル規模の「爆買い」には一定のルールがある。それは車を造る「高尖精」の技術をすべて手に収めようとすることだ。即ち、ケーニグセグと手をつないで、世界のトップクラスの完成車の研究開発と製造能力を穫得すること、CENATを抑えることにより、先端のバッテリー技術を穫得し、「恒大自動車」に「最強の心臓」を搭載すること、そして、e-TractionとProteanをゲットし、世界トップクラスの商用車と乗用車のハブモーター技術を入手し、「恒大自動車」に「ナタの風火輪」を付けることだ。
恒大グループは、不動産を始めとする各業務での年間売上は6000億元、2018年のコア業務の収益は同比93.3%増の783億元に達した。許氏が自動車業界に進出するために用意できる資金は、他のスタートアップ勢よりもはるかに豊富だ。
それ以外に、恒大にはプロサッカーチームもあるのだから、認知度アップのマーケティングをするには手っ取り早い。
ただ、許氏の「クルマづくりドリーム」は決して順風満帆だったわけでない。恒大はかつて賈躍亭氏の楽視汽車傘下のファラデー·フューチャー(FF)に投資して、有名な失敗を喫した苦い過去はあった。当時は、賈躍亭氏と香港証券取引所の仲裁の場で2ヵ月間にわたる「口喧嘩」を経験した。双方の争いは和解で決着したが、この失敗は逆に許氏の「野心」をあおったのではないかとみられている。
許氏は、恒大が「3-5年で世界最大規模、最強の新エネ車グループになる」との目標を掲げており、中国の新エネ車製造勢力が世界を席巻する可能性があると豪語した。
現在、規模を拡大しつつある新エネ車のバリューチェーンを見れば、許氏の「クルマづくり」の動機は真剣であり、少なくとも一部の思慮深い非良心的な商人より真面目だ。
また周知のように、許家印氏はビッグプロジェクトが好きで、自動車の勢力図に未開拓の部分が見つかったら躊躇なく首を突っ込んでいくだろう。
恒大は成功するか否かはまだ未知数だ。入場が派手でもそれを上回る立派な車を出さないと、かつての失敗をもう一度味わいかねない。