一汽VWとZYT、ガソリン車ADAS量産で協業深化――動力方式を問わないスマート化を模索

これまで、高度な運転支援機能は電気自動車が先行する領域と見なされることが一般的でした。この背景には、両者の電子電気アーキテクチャや電力供給能力、熱マネジメント条件、さらには車両制御ロジックに至るまでの構造的な違いがあります。そのため、ガソリン車においては高度な認識・制御システムを実装する際の技術的ハードルが相対的に高いとされてきました。
こうした中、一汽フォルクスワーゲン(以下、一汽VW)は卓驭科技(Zhuoyu Technology、以下ZYT)と協業し、ガソリン車プラットフォームにおける高度運転支援システム(ADAS)の量産化を進めてきました。この取り組みは、ガソリン車のスマート化を現実的に進める一つの方向性を示すものといえます。
協業の進展と技術投資
ZYTは、DJIの自動運転関連事業ブランドであり、前身は2021年に設立された同社の車載事業部です。2023年に分社化されて独立運営へ移行し、2024年6月より現在の名称が使用されています。
2019年以降、一汽とZYTは戦略的なパートナー関係を構築し、ガソリン車向けの運転支援技術の共同開発を進めてきました。2025年末には、一汽が36億元超を投じてZYTの株式35.8%を取得し、筆頭株主となっています。
一汽グループの一員である一汽VWは、ZYTによるガソリン車向け運転支援技術の実用化を先行的に推進しています。公開情報によれば、双方の開発は累計1400日以上に及び、10万キロを超える走行試験が実施されています。開発はコンセプト設計からハードウェア選定、アルゴリズム開発、車両検証に至るまで、幅広い領域にわたっています。
その成果として開発されたのが「IQ.Pilot」運転支援システムであり、フォルクスワーゲンのMQBプラットフォームを採用する複数の量産車種(MAGOTAN、TAYRON、TAVENDORなど)に搭載されています。
技術的な観点から見ると、ガソリン車における高度運転支援システムの実装には主に以下の課題が存在します。
- 熱管理および電力供給の制約:電動車のような水冷システムがないため、風冷構造やレイアウト最適化による放熱対策が必要
- 駆動制御の複雑性:エンジンとトランスミッションの機械的連携により、トルク応答が非線形になりやすい
- 通信系統の複雑さ:分散型アーキテクチャにより、複数モジュール間の連携が難しい
これらの課題に対し、本プロジェクトでは専用の放熱設計、非線形制御アルゴリズムの開発、車両通信の最適化などを通じて、システムの安定動作を実現しています。
システム構成と機能範囲
本システムは、カメラを中心とした認識方式にミリ波レーダーや超音波センサーを組み合わせたマルチセンサーフュージョン構成を採用しています。双眼カメラによる立体認識を軸に複数のセンサーを統合し、最大約200メートル先の車両や約120メートル先の工事区間を検知することが可能です。
アルゴリズム面では、エンドツーエンド型のモデルを採用し、認識から判断・制御までを一体的に処理しています。また、安全性を担保するための冗長設計も導入されています。このアプローチは一部の電気自動車メーカーと共通する側面もありますが、適用対象は特定の走行シーンに重点が置かれています。
機能面では、高速道路におけるナビゲーション連動支援(NOA)を中核に、都市幹線道路での支援、車線変更や合流・分岐対応、さらに記憶駐車や遠隔駐車などの機能を備えています。特に高速道路での利用が主軸となっており、公開テストでは約1860キロの連続走行においてドライバーの介入なしで走行を完了し、構造化された道路環境での安定性が確認されています。
一方で、無保護左折や歩行者・二輪車が混在するような複雑な都市環境においては、機能の適用範囲に一定の制約がある点も明らかです。あくまで高頻度かつ価値の高いシーンに焦点を当てた設計となっています。
製品化と市場ポジション
このシステムを搭載するTAVENDORを例にとると、その商品戦略は「ガソリン車のスマート化強化」という特徴を持っています。パワートレインは従来型の内燃機関(EA888エンジン+四輪駆動)を維持しつつ、車内のデジタル装備は電気自動車に近い水準(マルチディスプレイ連携、Snapdragon 8155チップなど)へと引き上げられています。運転支援機能は差別化要素の一つとして位置づけられています。
主なターゲットは、充電環境に制約があるユーザーや長距離移動が多いユーザー、機械的信頼性を重視する層などです。市場的には、「ガソリン車でありながら高度な運転支援機能を備える」という空白領域を補完する役割を担っています。
業界的意義と課題
この事例は、業界における二つの動きを示唆しています。
第一に、運転支援技術が動力方式から徐々に切り離されつつある点です。いわゆる「動力方式を問わないスマート化」という考え方が広がり、スマート機能が車種横断的な競争軸となりつつあります。
第二に、伝統的な自動車メーカーとテクノロジー企業の協業が深化している点です。従来の供給関係から一歩進み、共同開発や資本関係を伴う連携へと移行しています。
一方で、ガソリン車のスマート化には依然として構造的な制約も存在します。電子電気アーキテクチャが分散型であるため、計算資源の集約が難しく、OTAによる機能更新やデータ循環の仕組みも電動車に比べて制約があります。また、コストと機能のバランス調整もより厳格に求められます。
Teslaに代表される電気自動車メーカーと比較すると、全シーン対応能力やデータ規模、アルゴリズムの進化速度といった点では依然として差が残っているのが実情です。
まとめ
一汽VWとZYTの取り組みは、一定の条件下においてガソリン車でも高度な運転支援機能の実現が可能であることを示しています。特に高速道路などの構造化された環境では、主流の電動車に近い利用体験を提供できる段階に達しています。
もっとも、この動きが電気自動車の優位性を覆すものではありません。一方で、ガソリン車においても実装可能な技術ルートが具体化したことで、過渡期における競争力維持の選択肢が広がったといえます。
一汽VW TAVENDOR(揽巡)

写真:一汽VW