バングラデシュがEV減税策を本格導入 中国自動車メーカーの進出追い風に

近年、バングラデシュ政府は2026年度予算に電気自動車(EV)向けの包括的な税制優遇措置を盛り込みました。EV関連の税負担の軽減と内燃機関車両(ICE車)への課税強化を組み合わせることで、自動車産業の電動化を後押しする方針です。これにより、新エネルギー車の輸入や現地生産にかかるハードルが大幅に下がり、中国自動車メーカーにとっては同国市場への参入機会が拡大するとみられます。

今回の制度改正の特徴は、EVとICE車のコスト差を税制面から明確に広げた点にあります。完成車輸入については、BEV(バッテリー式電気自動車)の総合輸入税率が従来の93%から66~80%へ引き下げられました。一方で、車両価格が5万ドルを超える高価格帯EVのみ税率が若干引き上げられています。また、PHEV(プラグインハイブリッド車)についても同様の減税措置が適用されます。

商用EVに対する優遇措置はさらに手厚く、2030年6月までに輸入される電動バスおよび電動トラックについては、付加価値税(VAT)を除くすべての税金が免除されます。

現地生産の促進策も打ち出されています。2030年までに国内で組み立てられるEVのVATは5%まで引き下げられ、主要部品の現地調達・現地生産を実現した場合にはVATが全額免除されます。さらに、充電設備や自動車生産設備の輸入についても免税対象となり、自動車メーカーの現地工場建設や生産体制構築にかかるコスト低減につながる見通しです。

その一方で、ICE車への課税は強化されます。従来132.36%だった総合税率は155.88%へ引き上げられ、ガソリン車・ディーゼル車の競争力は一段と低下することになります。

また、関連するエネルギー産業向けの支援策も進められています。バングラデシュ政府はすでに、リチウムイオン電池や蓄電システムをはじめとする10種類以上の新エネルギー関連製品について、関税や規制税などを含む各種税率をゼロに引き下げています。こうした優遇措置はサプライチェーン全体を対象としており、EV普及を支える産業基盤の整備にも寄与すると期待されています。

今回の税財政政策の見直しは、単なる産業振興策ではありません。背景には、同国が抱えるエネルギー問題があります。バングラデシュのエネルギー供給は長年天然ガスに依存しており、化石燃料の多くを輸入に頼っています。近年は地政学リスクの高まりによるエネルギー供給の不安定化や天然ガス不足が深刻化しており、輸入エネルギーへの依存度を下げることが重要な政策課題となっています。交通部門の電動化は、その有効な解決策の一つと位置付けられています。

同国は中長期的なエネルギー転換目標も掲げています。2030年までに再生可能エネルギーで国内電力需要の20%を賄い、2050年にはクリーンエネルギーによる発電比率を30~50%へ引き上げる計画です。今回のEV減税策は、こうしたエネルギー転換戦略を実現するための重要な施策といえます。

政策面でEVへの支援を強化するバングラデシュは、中国メーカーにとっても新たな成長機会となりそうです。2026年4月に開催された「Dhaka Motor Show」の資料によると、長城汽車(GWM)、奇瑞汽車(Chery)、長安汽車(Changan)、福田汽車(Foton)、中国一汽(FAW)、東風汽車(Dongfeng)など複数の中国メーカーが、現地企業との提携による組み立て生産や現地生産を通じて、すでに市場参入している、あるいは参入を計画しています。対象は乗用車から商用車まで幅広く、中国ブランドの商用車市場シェアはすでに40%、乗用車市場シェアも15%に達しているとされます。現地での販売網やアフターサービス体制も徐々に整備されつつあります。

もっとも、バングラデシュのEV市場は依然として発展初期段階にあります。公開資料によれば、2024年までに登録されたEVは約400台にとどまり、市場規模はまだ限定的です。しかし、今回の税制優遇措置の導入によって、従来のICE車からEVへの需要シフトが進む可能性があります。こうした動きが進めば、中国メーカーが大きな恩恵を受けることになるでしょう。

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