CATL曾毓群氏、2030年までの全固体電池100万台搭載に懐疑的――「全固体電池ありきではない」

CATL(寧徳時代)の会長である曾毓群氏は6月10日、経済メディア『財経』のインタビューに応じ、全固体電池の将来性や商業化の見通し、新エネルギー分野における事業戦略について見解を示しました。同氏は、全固体電池への市場の関心は非常に高いものの、それが電池技術の「聖杯」ではないと指摘し、2030年までに100万台規模で車両に搭載される可能性は低いとの認識を示しました。また、商業化には依然として複数の重要な科学的・技術的課題の解決が必要だと述べました。

曾氏はまず、業界内で全固体電池の定義に一定の混乱があると指摘しました。厳密には、常温・常圧環境下で電解質が完全に固体化された電池のみが、本来の意味での全固体電池に該当すると説明しています。そのうえで、「全固体電池のために全固体電池を開発するべきではない」と述べ、技術開発は目的ではなく手段であるべきだと強調しました。

また、全固体電池が現在の電池技術の最終到達点であるとの見方についても否定的な考えを示しました。同氏によれば、全固体電池は電解質を液体から固体へ置き換える技術に過ぎず、正極材料や負極材料には依然として大きな技術革新の余地があります。例えば、より高電圧な電池システムを実現できれば、エネルギー密度をさらに向上させることが可能であり、電池技術には今後も多くの研究開発の余地が残されていると述べました。

商業化の見通しについて、曾氏は「2030年までに全固体電池を搭載した車両が100万台規模に達する可能性は極めて低い」と指摘しました。その理由として、「100万台規模を実現するには車両価格が十分に低くなければならないが、全固体電池は性能面とコスト面の両方で依然として課題を抱えている」と説明しています。

また、全固体電池がいつ本格的な商業化を迎えるかについては、単純に時期で判断すべきではないと述べました。同氏は、「イノベーションは時間によって進むのではなく、技術的ブレークスルーという“出来事(event)”によって進む」とし、関連する技術課題が解決されて初めて商業化が現実のものになるとの考えを示しました。

現在の技術課題の一例として、曾氏は「固体―固体界面」の問題を挙げています。正極材、負極材、固体電解質、さらには銅やアルミなど、それぞれ圧縮特性の異なる材料を一体化する必要がありますが、温間静水圧プレスなどの手法を用いても内部でずれが発生しやすく、イオン伝導効率の低下につながると説明しました。この問題は研究室レベルで一定の成果が得られたとしても、実用化段階ではなお多くの課題が残るとしています。

さらに曾氏は、新技術の商業化には「技術ルート」「製品ルート」「商品ルート」の3つの段階があると説明しました。まず技術的な実現可能性を確立し、その後に量産・安定供給体制を構築し、最終的には市場に受け入れられる価格競争力を備える必要があるという考えです。

CATLでは技術成熟度を示すTRL(Technology Readiness Level)を用いて技術開発の進捗を評価しています。TRLは1から9までの段階で構成されますが、曾氏によると、現在の全固体電池はおおむねTRL4の水準にあり、依然として技術検証段階にとどまっています。「技術ルートですらまだ4の段階であり、製品ルートや商品ルートについて語る段階ではない」と述べました。

これに先立ち、CATLのチーフサイエンティストである呉凱氏は、2027年までに全固体電池の技術成熟度をTRL7~8まで引き上げ、小規模量産を実現することを目標としていると明らかにしています。一方で、大規模量産については依然としてコスト面などで課題が残るとの認識を示しています。

このほか曾氏は、CATLの事業領域が近年大きく拡大していることにも言及しました。同社は車載電池に加え、蓄電システム、電力網、産業向けエネルギーソリューション、資源リサイクル、さらにはAIデータセンター向け電力供給分野にも進出しており、世界各地で工場建設や蓄電プロジェクトを推進しています。

曾氏は、CATLが「人類の新エネルギー事業に卓越した貢献を果たすゼロカーボンテクノロジー企業」を目指していると説明しました。その一方で、電池技術の将来を考えるうえでは冷静な視点が必要であり、全固体電池だけが唯一の進化の方向ではないと強調しています。材料技術や高電圧システムなど、今後も大きな発展余地を持つ技術分野が数多く存在するとの見方を示しました。

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