中国自動車業界、「薄利化」鮮明に――第1四半期の利益率3.2%、元高も重荷

乗聯会(全国乗用車市場情報連席会)幹事長の崔東樹氏が4月28日に公表したデータによると、2026年1〜3月期の中国自動車業界の売上高は約2兆4100億元となり、前年同期比0.2%減少しました。一方、コストは同0.7%増加し、利益は18%減少しました。業界全体の売上高利益率はわずか3.2%に低下し、1〜2月には一時2.9%まで落ち込み、過去10年で最低水準の一つを記録しました。
価格競争の長期化、市場成長の鈍化、さらに電動化投資の拡大を背景に、中国の自動車メーカー各社の収益力には急速に圧力が強まっています。大手自主ブランドから、変革期にある新興EVメーカーや伝統的完成車メーカーまで、幅広い企業で利益が悪化しており、「増収減益」や「販売増でも利益悪化」が業界全体で一般化しつつあります。
中国メディア「第一財経」が5月20日に公表したA株・香港上場自動車メーカーの決算集計によると、2026年1〜3月期業績を開示した主要乗用車メーカー12社のうち、半数超の企業で親会社株主に帰属する純利益が前年同期比で減少しました。また、5社が赤字に転落、あるいは赤字を継続しており、業界全体の利益率もさらに低下しています。
BYDは1〜3月期の売上高が1502億元となり、依然として中国最大規模の売上を誇る自動車メーカーでしたが、純利益は前年同期比55.4%減の40.85億元となり、売上高も約12%減少しました。同社は、新エネルギー車購入税優遇政策の調整、市場競争の激化、販売台数減少などを主因として挙げています。1〜3月期の販売台数は約70万台で、前年同期比30%減少しました。粗利益率は18.8%と依然高水準を維持したものの、前年同期の20.1%からは低下しました。
Geely(吉利汽車)は典型的な「増収減益」の状況となりました。1〜3月期売上高は前年同期比15%増の837.8億元だった一方、純利益は約27%減の41.66億元となりました。吉利は決算説明の中で、本業ベースの利益は依然として成長していると強調しましたが、為替変動の影響により、1〜3月期には4.97億元の為替差損を計上しました。前年同期には30億元超の為替差益があったことから、利益に大きなマイナス影響を与えました。
一方、Chery(奇瑞汽車)は業界内でやや異色の存在となりました。1〜3月期売上高は前年同期比3.45%減、純利益も小幅減少だったものの、41.7億元の純利益を確保し、主要メーカーの中でトップクラスを維持しました。純利益率は約6.3%と、業界最高水準の一つとなっています。業界では、その高い収益性は海外市場への依存度の高さによるものとみられています。奇瑞の1〜3月期輸出台数は39.3万台と前年同期比50%超増加し、総販売台数に占める輸出比率は65%を超えました。競争が極度に激化する中国国内市場と比べ、海外市場の方が依然として高い利益率を確保しやすい状況にあります。
Chang’an(長安汽車)の1〜3月期純利益はわずか3.5億元となり、前年同期比74%減少しました。純利益率も約1.1%にとどまりました。販売台数が20%超減少したことに加え、為替差益の減少も利益を大きく圧迫しました。財務諸表によると、財務費用は前年同期比で13億元以上悪化しました。
GWM(長城汽車)は売上高が前年同期比12%増加し、粗利益率も18.45%まで改善したものの、純利益は46%減少しました。同社は、前年同期には多額の為替差益が存在していたものの、今期にはその恩恵が消失したと説明しています。
GAC(広汽集団)では、「増収赤字」という状況が発生しました。1〜3月期売上高は約2%増加した一方、6.56億元の赤字を計上しました。同社は、為替変動による為替差損が利益悪化の主要因の一つだったとしています。
JAC(江淮汽車)も同様に、為替差損および持分法適用会社からの利益減少の影響を受けました。1〜3月期売上高は13%増加したものの、赤字額は6億元超へ拡大し、赤字幅は前年同期比170%超拡大しました。
伝統的自動車メーカーに加え、新興EVメーカーや構造転換期にある企業も厳しい状況に直面しています。Leapmotor(零跑汽車)は約3.9億元の赤字となり、赤字幅は前年同期比200%超拡大しました。BAIC(北京汽車)は8.3億元、BAIC BluePark(北汽藍谷)は8.7億元の赤字を計上しました。Haima(海馬汽車)やZotye(衆泰汽車)も、引き続き低収入・赤字状態が続いています。
全体として見ると、業界利益は明確な「上位集中」の傾向を示しています。BYD、SAIC(上汽集団)、Geely、Cheryの4社による1〜3月期純利益合計は約154億元に達し、統計対象企業全体の利益総額約156億元のほぼ全てを占めました。つまり、業界利益の大半を少数の大手企業が生み出している構図となっています。
その一方で、各社は研究開発投資を引き続き拡大しています。統計対象企業の約75%で研究開発費が前年同期比増加しました。例えばSeres(賽力斯)は、1〜3月期の粗利益率が26.2%と業界トップ水準に達したものの、研究開発費が7億元超増加したことで、非経常項目を除く純利益は大幅に減少しました。同社の純利益に占める政府補助金比率は80%超に達しています。
特に注目されるのは、2026年1〜3月期における中国自動車メーカーの利益悪化要因が、単なる価格競争やコスト上昇だけではなくなっている点です。現在では、為替差損が新たな「見えない利益圧迫要因」となりつつあります。
2025年下半期以降、人民元が段階的に上昇したことで、輸出依存度の高い自動車メーカーでは、為替差益の減少や為替差損の発生が利益を圧迫するケースが増えています。例えば、自動車メーカーがドル建てで海外受注を行った場合、入金までの期間中に人民元が上昇すれば、販売台数が変わらなくても人民元換算後の売上高は目減りします。この影響は、輸出規模を急速に拡大している中国メーカーほど大きくなります。
BYDでは、前年同期に約21億元の為替差益を計上していましたが、今期は約21億元の為替差損へ転落しました。この要因だけで約40億元の利益押し下げ要因となりました。Geely、Chang’an、GWM、GAC、JACなど多くのメーカーも、決算資料の中で為替変動の影響に言及しています。
中国自動車メーカーのグローバル展開が加速する中、為替リスク管理は新たな経営上の重要課題となりつつあります。一部企業では、ヘッジ取引などを活用したリスク管理を進めているものの、業界全体としては依然として適応途上の段階にあるとみられています。