日産、イギリス工場でChery車を受託生産へ――中国勢、欧州遊休工場活用の流れ加速

 日産自動車は6月3日、Chery(奇瑞汽車)のイギリス法人であるChery International UKと非拘束型の基本合意書(MOU)を締結したと発表しました。これにより、2027年度からイギリスのサンダーランド工場でCheryブランドの乗用車を受託生産する計画です。

 合意内容によると、Cheryの車両はサンダーランド工場の第1生産ラインで生産される予定ですが、工場設備や従業員の管理は引き続き日産が担います。

 現時点でCheryは、イギリスで生産する具体的な車種を明らかにしていません。近年、同社傘下のJaecoo(ジェイクー)、Omoda(オモダ)、LepasおよびCheryブランドのSUVはイギリス市場で販売を伸ばしており、過去2年間の合計市場シェアは7%近くに達しています。

 今回の提携は、日産が進めるグローバル再編計画と密接に関係しています。「Re:Nissan」計画では、2027年度までに世界の完成車工場を17拠点から10拠点へ削減する方針が示されています。サンダーランド工場自体は閉鎖されませんが、リーフ、キャシュカイ(Qashqai)、ジューク(Juke)などの生産を第2ラインへ集約し、空いた第1ラインについては外部企業への開放を進めることで稼働率の向上を図っています。

 サンダーランド工場は、日産にとって欧州唯一の完成車生産拠点であり、これまで電動化戦略の中核を担ってきました。しかし、欧州におけるEV市場の成長鈍化を受け、2025年の工場稼働率は45.5%にとどまりました。

 また、日産の最新経営戦略では、日本、米国、中国の3市場を中核市場と位置付けており、欧州は独立した戦略地域から外れ、「成長市場」のカテゴリーへ再編されています。

 もっとも、日産によるChery車の受託生産は特別な事例ではありません。近年、中国自動車メーカーは買収や提携、受託生産などを通じて海外の遊休生産能力を活用し、現地生産体制の構築を進めています。

 GWM(長城汽車)によるGMタイ工場の買収、BYDによるフォードのブラジル工場の取得、Cheryによる日産スペイン工場の活用、さらにマグナによるXPeng(小鵬汽車)やGAC AION(広汽埃安)の受託生産などは、その代表例といえます。

 2026年に入ってからは、この流れがさらに加速しています。BYDはStellantisとの間で欧州の遊休工場の取得について協議していることを認めており、東風汽車とStellantisもフランス工場での新エネルギー車生産の可能性を検討しています。また、一部メディアは、XPengが欧州工場の買収を視野に入れていると報じています。

 多国籍自動車メーカーにとっては、中国メーカーとの協業が余剰生産能力の解消につながります。一方、中国メーカーにとっては、工場建設コストの削減や市場参入期間の短縮に加え、関税引き上げや物流費高騰への対応策にもなります。

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