Stellantis、欧州4工場を中国勢に開放か――東風との受託生産協議が最終段階

世界第4位の自動車グループである Stellantis が、欧州における深刻な生産能力過剰を背景に、域内4工場の売却または共同活用を検討していることが明らかになりました。これに対し、中国自動車メーカー各社が有力な協業候補として浮上しています。
すでに名前が挙がっている工場は、フランス・レンヌ(Rennes)、スペイン・マドリード(Madrid)、イタリア・カッシーノ(Cassino)の3拠点です。4つ目の工場については正式には公表されていないものの、ドイツ・リュッセルスハイム(Rüsselsheim)工場ではないかとの見方が広がっています。
Stellantisは現在、これら工場の活用方針を見直しています。欧州市場の需要減速に加え、電動化投資負担の拡大、一部工場における低稼働率の長期化などを受け、外部パートナーを導入することで運営負担の軽減を図る考えです。
中国メディア「第一財経」が5月19日に報じたところによりますと、Stellantis関係者は、同グループと 東風汽車(Dongfeng Motor)との協議が最終段階に近づいていることを明らかにしました。Stellantisはフランス・レンヌ工場を活用し、東風汽車の地場ブランド車を少なくとも1車種受託生産する方向で調整を進めており、主に欧州市場向けに販売される見通しです。
このほか、BYD や Leapmotor などの中国メーカーも関心を示しているとされています。LeapmotorはすでにStellantisと技術提携を進めており、同社の「B10」モデルは2026年第3四半期に、スペイン・サラゴサのフィゲルエラス工場で生産開始予定です。同工場はStellantisが運営していますが、中国ブランドEVの生産拠点として活用される計画です。
また、BYDも最近、Stellantisを含む欧州メーカーと、遊休生産能力の活用について協議していることを認めています。
今回の再編の背景には、Stellantisの業績悪化があります。同社は2025年に223億ユーロの最終赤字を計上しました。2024年は黒字を維持していたものの、電動化戦略の見直しに伴う大規模な減損処理や再編費用が業績を大きく圧迫したと説明しています。
中国メーカーにとって、欧州既存工場の活用は「海外進出2.0」における重要な選択肢とみられています。新工場を建設する場合と比べ、合弁、生産委託、設備リースなどを通じて欧州市場へ参入することで、立ち上げ期間を短縮できるほか、関税回避、物流コスト削減、現地サプライチェーンや熟練労働力の確保といった利点があります。
もっとも、これは単純に「割安で工場を取得する」話ではありません。欧州で生産を行う以上、高い人件費や厳格な環境規制、労働組合との協議といった負担を抱えることになります。さらに、EV市場の変化や次世代技術の登場によっては、現在価値があると見られている工場も、数年後には再び重荷となる可能性があります。
そのため、中国メーカー各社は、工場を全面買収するよりも、柔軟に撤退・再編が可能な協業モデルを重視する傾向を強めています。