中国のレンジエクステンダーEVが失速 販売減速の背景と今後の成長余地を探る

中国汽車流通協会乗用車市場情報連席分会(乗連会)のデータによると、2026年6月の中国におけるレンジエクステンダーEV(EREV:Extended-Range Electric Vehicle)の卸売販売台数は9万4,000台となり、前年同月比25.2%減と、この5年間で最大の単月減少率を記録しました。2026年1~6月の累計卸売販売台数は50万4,000台で、前年同期比13.1%減となり、新エネルギー車市場に占めるシェアも6.4%まで低下しました。
近年、EREVは中国の新エネルギー車市場を支える主要な技術の一つとして存在感を高めてきました。EREVの販売台数は2020年の約3万台から2025年には123万5,000台へと急拡大しており、現在の国内保有台数は250万台を超えています。Li Auto(理想汽車)やファーウェイ系のAITO(問界)が市場で成功を収め、Leapmotor(零跑汽車)、Deepal(深藍汽車)、XPeng(小鵬汽車)なども相次いで参入したことで、高級車市場を中心としていたEREVは次第に一般家庭向け市場へと広がり、市場規模を拡大してきました。
しかし、2025年後半以降、EREVの販売は伸び悩み始めます。2026年に入ると減少傾向はさらに鮮明となり、今年上半期の新エネルギー車販売ランキングトップ10からEREVは姿を消しました。EREVを主力としてきた一部メーカーでも、BEVの販売比率が上昇しています。
業界では、EREVがこれまで支持を集めた最大の理由は、ユーザーの航続距離に対する不安を解消したことにあるとの見方が一般的です。BEVの航続距離や充電速度、充電インフラが十分ではなかった時期には、充電と給油の両方に対応できるEREVは、多様な利用シーンに対応できる車両として市場の支持を集めました。
その後、充電インフラは急速に整備されました。2026年5月末時点で、中国国内の充電ガン設置数は2,249万7,000基に達し、前年同期比44.9%増となりました。公共充電設備、家庭用充電設備ともに高い伸びを維持しています。また、800V高電圧プラットフォームや超急速充電技術、高出力バッテリーの普及も進み、BEVの充電利便性は大きく向上し、航続距離への不安は大幅に軽減されています。
消費者側から見ると、多くのユーザーは「近距離は電気、長距離はガソリン」という使い分けを想定してEREVを購入します。しかし実際には、燃料費を抑えるため普段は給油せず、日常の移動はほぼ充電のみで済ませるケースが少なくありません。その結果、より高いコストをかけて2つの動力システムを搭載しながら、大半の時間はBEVとして使用することになり、使用頻度の低いエンジンや燃料タンクを常に搭載することで車両重量や電力消費の増加につながります。また、バッテリー容量が比較的小さいため充放電回数が多く、同じ走行距離でもBEVに比べて充放電サイクル数が多くなる傾向があります。
こうした市場環境の変化を受け、自動車メーカーは「大容量バッテリー+小型燃料タンク」という新たな商品戦略を打ち出しています。新型EREVの多くは60~80kWh級のバッテリーを搭載し、EV走行距離は300~400kmまで拡大するとともに、800Vプラットフォームも採用しています。しかし、BEVの航続距離がさらに伸び、車両価格も低下傾向にあることに加え、燃料価格の上昇も重なり、EREVの優位性は従来に比べて薄れつつあります。
販売は減少しているものの、業界関係者の多くは、EREVには依然として一定の需要が残るとみています。例えば、自宅に充電設備を設置できないユーザーや寒冷地・高地の利用者、あるいは長距離移動が多いユーザーなどが主な対象です。
また、海外市場はEREVにとって重要な成長分野として期待されています。乗連会によると、2026年に入ってからEREVの輸出台数は高い伸びを維持しており、1~5月の累計輸出台数は6万1,000台と前年同期比266.9%増、6月も前年同月比150%超の伸びを記録しました。現在、Li AutoやLeapmotorは海外展開を加速させており、LeapmotorはStellantisとEREV技術分野で協業を進めています。業界では、充電インフラの整備が十分ではない一部の海外市場では、EREVが引き続き競争力を持つとの見方が示されています。
今後、充電インフラのさらなる整備とバッテリー技術の進歩に伴い、EREVは一般市場における優位性が弱まる一方、特定地域や特定のユーザー層、さらには海外市場では引き続き一定の成長余地を持つとみられています。将来的には、EREVは市場から姿を消すのではなく、用途や利用シーンに応じて他のパワートレインと長期的に共存していく可能性があります。